The previous night of the world revolution~F.D.~
…数日前のある日。

俺は、朝から自分の執務室でデスクと向き合い、書類仕事に精を出していた。

本当は急ぐ仕事ではないのだが、まるで納期が間近に迫っているかのように、急いで終わらせた。

何故こんなにも気持ちが焦ってしまうのか、その理由は明白である。

…俺の隣に居るべき人間が、ここに居ないから。

それだけで俺は、気持ちが急いてしまうような、忙しない、落ち着かない気分になるのだ。

…すると、そこに。

「ルルシーさん。失礼します」

凖幹部のルヴィアが、俺の執務室を訪ねてきた。

「あ…ルヴィアか。どうした…?」

根を詰めて集中していた俺は、やって来たルヴィアに手を止めた。

「これ、頼まれてた書類と資料です。確認お願いします」

ルヴィアは、持ってきたA4サイズの封筒を差し出した。

あぁ、そういや頼んでたんだっけ…。

「ありがとうな、ルヴィア。助かるよ」

「いいえ、このくらいお安い御用です。…それより、ルルシーさん」

ん?

「そろそろお昼ですよ。昼休憩、取られたら如何です?」

ルヴィアに言われて、部屋の壁時計に目をやると。

いつの間にか、正午を過ぎてきた。

もうこんな時間だったのか…。全然気づかなかった。

「えぇと…気持ちは分かりますけど、あまり根を詰め過ぎても良くないですよ」

「…そうだな…お前の言う通りだよ」

ルヴィアの目から見ても分かるほど、ここ数日の俺は落ち着きをなくしてるよな。

自分でも自覚はある。

ルレイアがいないと、俺はてんで駄目なんだな…ってことを、嫌と言うほど思い知らされる。

誠に情けない。そして不甲斐ない。

「少しは気分を変えて…。お昼、外で召し上がったらどうですか?」

「いや…いいよ。出て行くの、面倒だし…」

ルレイアが居るなら、食事にでも何処にでも、一緒に行くけどさ。

一人だと、わざわざ外に食べに行く気にならない。

コンビニのおにぎりでも齧ってた方がマシだ。

美味しいもんな。コンビニのおにぎり。

しかし、ルヴィアは。

「それじゃあ、出前を取りましょうか?」

気を利かせて、そう提案してくれた。

出前か…。

「良いかもしれないな…。頼むよ」

「分かりました。じゃあ、すぐに電話しますね…。…もしもし、はい、はい…。はい。チーズもちもちお餅ピザのLLサイズを一枚お願いします」

ちょっと待て。勝手にメニューを決めないでくれよ。

ピザ?ピザなのか?よりによって?

しかもLL?デカくね?

「トッピングですか?はい…じゃあお餅を倍量で…。生地の厚さ?いえ、パリパリクリスピーじゃなくて、もちもち極厚でお願いします」

おい。ちょっと待てって。勝手に決めるな。

餅を乗せたピザの上に、更に餅をトッピングした上に。

生地までもちもち極厚生地って、それは俺に対する嫌がらせなのか?

「サイドメニュー?…あ、要らないです」

勝手に要らないって言うな。箸休めに、サラダくらい頼ませてくれよ。

「ドリンク?…いえ、ドリンクも要らないです」

もちもち餅ピザを、飲み物無しで食えと?

それどんな苦行?

「住所は〇〇市の〇〇番地、〇〇ビルで…はい、お願いしまーす」

「ちょっと待てルヴィア、俺は別の、」

と、言いかけた時には既に遅く。

ブチッ、と通話終了。

「はい、頼みましたよルルシーさん。30分ほどで来るそうです」

「…そうか…。…ありがとうな…」

乾いた笑いしか出てこないんだけど。果たして俺、そのピザちゃんと食べ切れるのか?
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