The previous night of the world revolution~F.D.~
きっちり30分後。

俺のもとに、特大サイズのもちもちお餅ピザが届けられた。

デカッ…。

しかも、極厚生地の上に、これでもかとお餅がトッピングされている。

…何これ?喉に詰まらせてくたばってしまえ、というルヴィアから俺への悪意のメッセージなのか?

だが、このピザを注文したルヴィアは。

「どうぞ、ルルシーさん。食べてみてください」

曇りない笑顔で、俺にピザを勧める。

その瞳に、悪意など一切感じられない。

「あ、ありがとう…」

お手拭きで手を拭いてから、恐る恐るピザに口をつけたが。

味は、普通に美味しかった。ちょっとピリ辛で。

お餅がむに〜っと伸びて、食感も楽しい。

…まぁ、明らかに餅乗せ過ぎだけど。

顎が鍛えられるなぁ…。

「どうですか?美味しいでしょう?」

「うん、まぁ…そうだな」

「それは良かったです。この間、うちもお昼ご飯に嫁が宅配ピザを食べてみたいって言うんで、そのピザを頼んだんですよ」

と、嬉しそうに教えてくれた。

あぁ、成程。ルヴィア嫁が発端なんだな。

「お餅をむに〜っと伸ばしながら、はふはふしてピザ食べてるフューニャ…。本当に可愛かったなぁ…。動画、撮っておけば良かった…」

「…そうか…。…それは良かったな…」

「はい!」

唐突に部下の惚気話を聞かされた俺。どう反応すれば良いんだ?

お前らがいつも通り、仲睦まじくて何より。

…で、まぁピザが美味しいのは良いんだけどさ。

…LLサイズは、いくらなんでも大き過ぎるだろう。

もちもちの極厚生地と、嫌がらせのように大量に乗せられたお餅のせいで、咀嚼の回数が多い為だろう。

二切れ食べただけで、もうお腹いっぱいなんだけど。

美味しいが、なかなか凶悪だぞ。このピザ。

Sサイズが良かった。せめてMサイズ。

LLなんて、明らかに3〜4人用だろ。

お一人様のサイズじゃないって。

「ルヴィア。お前も昼飯、まだだろ?一緒に、このピザを食べるのを手伝ってくれ」

全然減らないピザを前に、俺はルヴィアにそう頼んだ。

しかし、ルヴィアは。

「済みません。俺、お弁当を持ってきてるので」

ルヴィアは、巾着袋(多分手作り)に入ったお弁当を、サッ、と取り出した。

…何で持ち歩いてんの?それ。

「それじゃ、ここでいただきますね」

で、それを何でここで食べるんだ?

見せつけたいのか、ルヴィア。嫁が作ったくれた愛妻弁当を、俺に見せつけたいのか?

嫁の愛妻弁当を持参しているような『青薔薇連合会』の凖幹部は、お前くらいのものだろうよ。

仲良さそうで何より。

ルヴィアは満面の笑みで、巾着袋からお弁当箱を取り出した。

「あ、ルルシーさん。ちなみに、この巾着袋も嫁が縫ってくれたんですよ」

「はいはい」

そんなことだろうと思いました。

そんな豆知識みたいに教えてくれなくて良いから。

俺の目の前で、ルヴィアは、ぱこっ、とお弁当箱を開けた。
< 125 / 522 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop