The previous night of the world revolution~F.D.~
全く。愛人なんて最低ですよ。

いつだってルルシー一筋で、生まれてこの方愛人なんて一人も作ったことのない俺にとっては、汚らわしいことこの上ない。

「お母様がよく言ってますわ。お姉様は頭が良くて賢いですけど、でも性格が尖ってて愛想がない、って」

明るさ満点の妾の子もなかなかいないだろ。

ましてや、自分の夫の愛人の娘なんて、いかにも険悪な仲になりそうじゃないか。

愛憎ドロドロ劇ですよ。

「お姉様のことは、わたくしから謝りますわ。気を悪くさせてしまってごめんなさいね」

「そんな…。良いんですよ、マリーフィアさんのせいじゃありません。ただ…俺としても、痛くもない腹を探られるのは遠慮したいので…」

「勿論、分かっていますわ。お姉様の言うことは気になさらないで。わたくしは、ルナニアさんのことを信じていますから」

キラキラした目で、マリーフィアは俺にキザな台詞を吐いた。

はいはい。洗脳完了。

チョロいもんですよ。

マリーフィアとメリーディアの性格が逆じゃなくて良かった。

内心ドヤ顔を決めていると、突然。

マリーフィアが、もじもじし始めた。

「そ、それでその…ルナニアさん…」

「?どうしたんですか、マリーフィアさん」

「その…ふ、夫婦の…よ、よよよ、夜のことなんですけど…」

…あー…。

夫婦として、必要最低確認事項ですね。それは。

気持ち悪いんで、そんな照れなくて良いですよ。

俺としては、マリーフィアとはあくまで偽装結婚の関係。

身体の関係を持つのは面倒なんですけど?

「じ、実はわたくし…その…は、初めて、でして…」

「あぁ…」

処女乙。

「そ、そういうことって…どうやったら良いのか分からなくて…。る、ルナニアさんのお手を煩わせてしまうかもしれませんわ…」

だってさ。

いじらしい台詞ですよね。

相手がマリーフィアのせいで、ちっとも萌えませんけど。

これがルルシーだったらなぁ…。涎を垂らして、今頃襲い掛かって押し倒してたんだが…。

「大丈夫ですよ、マリーフィアさん。あなたの心の準備が出来るまでは、そんなことはしませんから」

俺は、笑顔でそう言ってあげた。

なんて優しい俺。

「ほ、本当に…?それまで、待ってくださいますの?」

「えぇ。勿論です」

失礼だな。俺のこと、いついかなる時でも、性欲に飢えてる獣だとでも思ってるのか。

それは確かに弁解の余地もないほど仰る通りですけど、でも俺は、処女の小娘は趣味じゃないんですよ。

仕事でもない限り、相手にはしたくないですね。

処女なんて面倒臭いだけで、味も美味しくない。

俺はもっと、脂の乗った濃厚な味が好きなんです。

ってな訳で、一生心の準備出来なくて良いですよ。

「ありがとうございますわ…。ルナニアさんは、本当に優しいですわね」

「いえいえ、当然のことですよ」

にっこり営業スマイル。

良い感じに落とされてくれたようで、何より。
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