The previous night of the world revolution~F.D.~
朝食の後、早速俺はマリーフィアと共に、カミーリア家の屋敷を見て回った。

「ここがキッチンで…。ここが、お客様をお迎えした時に使う正餐室ですわ」

「ほうほう。さすが広いですね」

「そうですか?これくらい普通だと思いますわ」

これが普通だったら、一般家庭の家はどうなるんだ?

マリーフィア基準だと、一般家庭のリビングルームは、ウォークインクローゼット以下なんだろうな。

「それから…この先が大浴場ですわ」

「広いですね。温泉旅館みたいです」

一体何人で風呂入るつもりなんだ?ってくらい広い。

おまけに、大理石のタイルにところどころ、トパーズやサファイアなどの宝石が埋め込まれている。

どういう趣味してんの?

「それからこの部屋が…」

「肖像画がいっぱいですね」

「えぇ。カミーリア家のご先祖様ですの」

カミーリア家の代々の当主達の写真や肖像画が、年代順に並んでいる。

肖像画に描かれたカミーリア家の歴代当主は、いずれも大きな宝石のついた指輪や首飾りを、ジャラジャラと纏った姿で描かれていた。

自己顕示欲の塊。

品性の欠片もなく、デカい宝石をつけたがるのは、カミーリア家の血筋ということか…。

何なら、肖像画の額縁にも宝石が埋め込まれている始末。

悪趣味と言わざるを得ませんね。

貴族の家として、俺の…ウィスタリア家の実家にも、歴代当主の肖像画と写真を並べた部屋はあったけど。

ここまで悪趣味ではなかったぞ。さすがに。

「それからこちらの部屋が…音楽室ですわ」

「へぇ…。グランドピアノがありますね」

防音設備を施した広い部屋には、ご立派なグランドピアノの他、バイオリンやチェロや、ケースに入ったトランペットやトロンボーンまであった。

壁の本棚には、楽譜が並べられていた。

「これらの楽器は、マリーフィアさんが弾くんですか?」

「い、いえ。わたくしはあまり…」

ただの飾りかよ。

「でも、ピアノは嗜んでらっしゃるんですよね」

前言ってただろ。忘れたとは言わせないぞ。

「えぇ…。一応は…」

「試しに、ちょっと弾いてみてもらえませんか?」

「え。い、今ですか?」

「えぇ、今です」

にっこり。

「そ、そんな…わたくし、そんなに上手くありませんのよ」

「良いじゃないですか。俺、マリーフィアさんの演奏を聴いてみたいです」

「そ…そこまで仰ってくださるなら…」

マリーフィアは照れ臭そうに、グランドピアノの前に座った。

「えぇと…それじゃあ一曲…」

鍵盤の上に手を置いて、マリーフィアはピアノを弾き始めた。

ピアノを弾いてくれとリクエストしたのは、単なる思いつき半分、好奇心半分だったが。

すぐに、俺は自分の思いつきを後悔した。

お前、本当にピアノ習ってたことあるのか?と聞きたくなるくらい、下手くそ。

リズムも音程も狂いまくりだし、元の原曲が分からなくなっている有り様。

…今日日、小学校低学年でももっと上手に弾くぞ。

これだったら、俺が演奏した方がまだ上手いのでは?と思うくらいヘッタクソ。

それなのに、マリーフィアはドヤ顔で演奏を終えた。

「ど…どうでした?今日は、かなり上手く弾けたと思いますわ」

これで上手く弾けたってマジ?

お前、もう音楽やめたら?
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