The previous night of the world revolution~F.D.~
「そう…。ルナニアさん、見てしまったんですわね…」

「す、済みません…。勝手に…」

「いえ…良いんですのよ。ルナニアさんも、今やカミーリア家の一員ですもの。いずれ、折を見てお話するつもりでしたの」

とのこと。

「あれを見てしまったのね」なんて意味深なこと言うから、このまま消されるのかと思いましたよ。

「じゃあ、ご案内しますわね」

と言って、マリーフィアは俺をその部屋に案内した。

昨日と同じ。銀行みたいに堅牢な金庫が、姿を現した。

…改めて見ると、かなりの迫力だな。

非常に物々しい雰囲気。

「凄い金庫ですね…」

「えぇ。この中には、とても大切なものが保管してありますのよ」

知ってる。

「カミーリア家は、昔からいくつもの鉱山を所有していて、数多くの宝石を取り扱ってきたんですけど」

「その辺りのことは、俺も知ってますよ」

「そうですわよね。ですから、鉱山で採れた貴重な宝石を、この宝物庫に保管してるんですの」

ふーん。

随分勿体ないことをする。

宝石なんて、人の目に晒されてこそ価値のあるものだろう。

後生大事に宝物庫の中に眠らせたんじゃ、その宝石の輝きを目にする者はいない。

「特に、この宝物庫で最も価値のある宝石があって…」

「…『ローズ・ブルーダイヤ』ですか?」

「…!知ってたんですの?」

そりゃあ、勿論。

その為に、俺はわざわざあなたと結婚したので。

「貴族の間では有名ですからね。カミーリア家が所持する貴重なダイヤ…。都市伝説かと思ってたんですが…」

「都市伝説ではありませんわ…。ちゃんと、この中に保管されていますわ」

盗まれたらしいですけどね。

「マリーフィアさんは…『ローズ・ブルーダイヤ』を見たことがあるんですか?」

「えぇ、ありますわ。代々、カミーリア家の当主と、直系の跡継ぎのみが目にすることを許されますの」

つまり、妾の子であるメリーディアと、婿養子である俺には、見る権利がないということか。

差別ですよ、差別。

「年に一度、当主の誕生日の日にだけ、ここの宝物庫は開けられますの。そして、中にある宝石が変わらず保管されているか、確認するんですのよ」

俺が真剣に聞くものだから、マリーフィアは気を良くして、ペラペラと大事なことを喋りまくった。

…それは良い情報を聞いた。

「年に一度だけ…。『ローズ・ブルーダイヤ』も確認するんですか?」

「勿論ですわ。『ローズ・ブルーダイヤ』を入れている宝石箱は、とても特別な仕組みで…代々、当主にしか開けられないんですの」

それも知ってる。

「だから、年に一度のその日に、当主…お母様が宝石箱を開けるところを、わたくしも見せてもらって…。そうやって、開け方を伝授してもらいますの」

「へぇ…。そういう決まりなんですね」

「えぇ。変わってるでしょう?でも、これがカミーリア家の伝統なんですの」

苦笑いで説明するマリーフィア。

…これは良いことを聞いた。

つまりいざとなったら、マリーフィアか、マリーフィアの母、ユリーフィアを拷問or洗脳すれば。

『ローズ・ブルーダイヤ』を入れたジュエリーボックスを開けさせることが出来る、ということだろう?

これ大変貴重な情報ですよ。
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