The previous night of the world revolution~F.D.~
――――――…ルルシーとの通話を終えるなり、俺の気分は一瞬にして浮足立っていた。

だって、ルルシーが「俺に会いたい」って。

大好きな人に「会いたい」って言われたんですよ?胸がときめかない乙女がいると思います?

これはえっち不可避ですね。

カラオケじゃなくて、ホテルの方が良かったのでは?

まぁいっか。たまにはカラオケで…っていうのも燃えますもんね?

いやん。ルルシーったらアブノーマル。

にゅふふな笑いが止まりません。

さて、そうと決まれば出掛ける自宅をしないと。

いつもの真っ黒な衣装に、愛用のオーダーメイドオリエンタル香水を、たっぷりつけたいところだが…。

残念ながら、この家にいる間は、いつもの「正装」はお預けである。

折角ルルシーに会うのに、勝負服を着ていけないなんて。

仕方ないから、グレーのシャツで妥協。

うーん。黒さが足りない。

こんなんじゃあ、ルレイア・フェロモンも半減ですよ。

鏡の前に立って、残念な自分の姿に落胆していると。

そこに、部屋をノックする音が聞こえた。

「ルナニアさん。入りますわね」

「あ、マリーフィアさん」

いたのか。お前。

そういやいたなぁ。大学行ってろよ。

「わたくし、ルナニアさんと一緒に音楽鑑賞をしようと…あら?ルナニアさん、お出掛けですの?」

「はい、そうなんです。ちょっと出掛けてきます」

どうやら、俺と遊びたかったらしいが。

済みませんね。大事な大事な先約があるので。

行き先カラオケなので。一種の音楽鑑賞ですね。

「どちらに?お一人で…?」

「ちょっと、街で友達と会うだけですよ」

本当はルルシーのことを「友達」なんてありきたりな言葉で括りたくないんですよ。

彼はもう、俺にとって友人の域を超えてますから。

俺にとってルルシーは、自分の存在意義そのもの。

自らの半身なんです。

「そうですの…。お友達って…。…女性ですの?」

マリーフィアは何を誤解したのか、口を尖らせるようにしてそう聞いてきた。

女?ハッ。

ルルシーは俺にとって、男でも女でもないですよ。

ルルシーという、一つの性別がそこにある。

「まさか、違いますよ。俺はマリーフィアさんを裏切るような真似はしません」

だって、最初からあなたに気を許したことは一度もありませんからね。

嘘は言ってませんよ。俺は。

苦笑いしながらそう答えると、マリーフィアはそれでも、釈然としない様子で。

「そうですの…。でも、これまでお友達のお話なんて全然…」

自分は大学の必修講義をすっぽかしてまで、お友達とお買い物に行ってた癖に。

俺がちょっと友達と出掛けると、途端に嫉妬心剥き出しにするとは。

自分勝手にも程があるのでは?
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