The previous night of the world revolution~F.D.~
先にカラオケルームでうきうきしながら待っていると。

「悪い。遅くなっ、」

「ルルシーぃぃぃぃぃ!!」

「うわっ、飛びつくな!」

やって来たルルシーに、俺は思いっきり抱きついた。

あぁ、この感触。正しくルルシーですよ。

俺はルルシーにしがみついて、ルルシーの匂いをいっぱいに吸い込んだ。

すぅー…。…はぁー…。

あぁ、なんて良い匂いなんでしょう。

まるで、ガス欠だった車にガソリンをいっぱいに満たしたようだ。

身体中の至るところに、エネルギーが充填されるのを感じる。

今ならフルマラソンを余裕で完走出来ますよ。

「はぁはぁ。ルルシーの感触。ルルシーの匂い…!」

「ちょ、気持ち悪い。離れろ!」

「この匂いだけで、どんぶり飯三杯は食べられる…!」

「…良いから、離れろ」

あぁっ。

ぐいっと身体を押され、強制的に離されてしまった。

酷いわルルシー。まだ充電中だったのに。

あと10時間くらいくっついていたかった。

「ったく…。人並みに家庭を持って、少しは大人しくなったかと思ったが…。…全然変わってないようだな」

「幻滅しました?」

「いや…むしろ、安心したよ」

そうですか。それは良かった。

俺らしからぬ格好をしていますけど、心はいつでも、ルルシーのよく知っている、いつものルレイアのままですよ。

あぁ、演技しなくて良いって素晴らしい。

素のままの自分でいるって、とても大切なことですね。

「一応、元気そうで良かった…」

ルルシーのことだから、ずっと心配してくれてたんでしょうね。

「困ったこととか、不安なこととかなかったか?」

「そうですね…。何度かイレギュラーな事態は起きましたけど、困ってはいませんよ」

例えば、メリーディアに疑いの眼差しを向けられていたこととか。

例えば、マリーフィアに代返を頼まれたこととか。

…例えば、いつの間にか帝国騎士団に戻るように言われたこととか。

色々ありましたけど、まぁ想定の範囲内ですよ。

それに、今ルルシーに会って、エネルギー充填されましたから。

ばっちり笑顔で対応してみせますよ。

「ルルシーに会ったら元気が出たので、大丈夫ですよ。心配しないでください」

「そうか…。それなら良いけど…。…あ、そうだ、これ」

ん?

ルルシーは、Lサイズのポテトチップスの袋を取り出した。

「これ、アリューシャからの土産だ。『このポテチをアリューシャだと思って、大事に食べてくれ』だとさ」

成程。そう言ってるアリューシャの姿が容易に想像出来ますね。

何より素敵なお土産じゃないですか。

「そうですか。それはありがとうございます」

「あと、シュノから伝言だ。この間送ってくれた、箱庭帝国土産のワンピース、ありがとうってさ」

あぁ、あの民族衣装ワンピースのことですか。

着てくれたんですね、あれ。きっとシュノさんによく似合っていただろう。

この目で見られないのが残念だ。

「どういたしまして、ってシュノさんに伝えてください」

「分かった」

この面倒な任務が終わって、『青薔薇連合会』に帰ったら。

新しいワンピースを着たシュノさんを、この目で見させてもらうとしよう。
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