The previous night of the world revolution~F.D.~
その後も、次々と新しい香水の香りを嗅いでもらって。

それぞれの香水に対する感想を聞かせてもらった。

「お疲れ様です、皆さん。サンプルは以上になります」

「終わったー!鼻が曲がったぜ。アリューシャ、今目の前にポテチを出されても何の匂いも感じなさそう」

「どれも負けず劣らず、素敵な香りばっかりだったわ」

ありがとうございます、シュノさん。

シュノさんはどれもべた褒めしてくれて、嬉しかったですよ。

「皆さんの意見を参考に、今後の香水開発を進めていくことにします」

「…それは結構なんだがな、ルレイア」

「はい、何ですか?ルルシー」

「その香水屋って、売れるのか?」

…何を言い出すかと思えば、ルルシーったら。

「こんなに良い香りなんですよ?売れるに決まってますよ」

「お前にとっては良い香りでも、他の人にとってもそうとは限らないだろ」

酷い。ルルシー。

何でそんな冷ややかな目で見るんですか。

「誰もがお前みたいに、オリエンタルな香水が好きだと思うなよ」

「確かに、オリエンタルノートの香りは好みが分かれる、と言われがちだが…。しかし、ルレイア先輩の作る香水なら大丈夫だ」

と、ルリシヤが言ってくれた。

「何処にそんな根拠があるんだよ?」

「お忘れですか、ルルシーさん。ルレイア師匠がこれまで成し遂げた偉業の数々を」

「…偉業…」

ルーチェスが、非常に説得力のある「根拠」を語ってくれた。

「ルレイア師匠が作ったゴスロリ専門店。風俗店の数々。そして、先日の『ブラック・カフェ』。ルレイア師匠が企画して経営している店で、一つでもハズレがありましたか?」

「…言われてみれば…」

気づいたようですね、ルルシー。

さすがルーチェス。俺のことをよく分かってくれている。

その通り。この敏腕経営者、ルレイアにお任せください。 

「ばっちり儲けてみせますよ、ルルシー。ご心配なく」

「…全く根拠はないはずなのに、お前が言うと何とかなりそうな気がするから、不思議だよな…」

いやん、ルルシー。嬉しい言葉をありがとうございます。

それもこれも、ルルシーが俺の隣に居てくれるからですよ。

ルルシーが隣に居てくれるってだけで、俺は無限の力が溢れてくるんです。

「…ルルシー!しゅき!」

「うわっ、ちょ、何だよいきなり?抱きついてくるな!」

「素敵な愛情表現ですね。滾る…!」

「おい、そこの腐男子。勝手に妄想を捗らせるな」

良いじゃないですか、ルルシー。そんなに照れなくても。

ほんっと、シャイなんだから。そんなところも大しゅきですけどね。



…しかし。

そんな、いつも通りの素晴らしい日常を送っていた俺達のもとに。

不穏な影を落とす、一通のメールが届いた。

「…ん?」

俺のスマホに、『frontier』の新曲のワンフレーズ…着信音…が鳴り響いた。
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