The previous night of the world revolution~F.D.~
さて、ルルシーとの心のこもった挨拶も終わったし。

おやつのポテトチップスももらったことですし。

「じゃ、早速何曲か歌いましょうか」

忘れるなかれ。ここはカラオケルームである。

さっきから、隣の部屋で歌ってる人の歌声が聴こえてきてるんですよ。

他人が歌ってる声を聴くと、負けじと「自分も歌いたい!」って気分になりません?

カラオケルーム特有のテンションが、そこにある。

「えぇっと、まずは…この間配信されたばかりの『frontier』の新曲を…」

「…おい、ルレイア。それどころじゃないだろうが」

「あ、ルルシーは別の曲が良いですか?じゃあ『frontier』の人気曲の一つを…」

「そうじゃない。歌ってる場合じゃないだろうが」

「あ、そうか。成程、そうですね」

俺は、ルルシーの言いたいことを察して、ぱちんと指を鳴らした。

そうだった。大切なことを忘れてましたよ。

「ドリンクを取ってくるのが先ですね。昼間からお酒もアレですし、無料のソフトドリンクを、」

「おい、お前…ふざけるなよ」

「いたたたたた」

ルルシーは、俺のほっぺたをぎゅー、っとつねった。

酷いわルルシー。DVですよ。

「それどころじゃないだろうが。歌って誤魔化そうとするな」

「にゃ、にゃんですか…?」

ほっぺつねるのやめてくださいよ。呂律が回らないじゃないですか。

「…お前、本気で帝国騎士団に戻るつもりなのか?」

そう尋ねるルルシーの目は、真剣そのものだった。

…まぁ、そうなりますよね。

俺も必死に話題を逸らそうと頑張りましたけど。

ルルシーがわざわざ会って話したいと言ったのは、この為だと分かっている。

だったら、俺も真面目に答えますよ。

いや、俺はいつだって真面目に、真剣に生きてますけどね。

「えぇ、そのつもりです」

「…何がどうあっても、考えを変える気はないんだな?」

「ないですね」

カミーリア家の当主であるユリーフィア母に命じられた以上、婿養子である俺に断ることは出来ない。

どうせ一時的なことだし、オルタンス達だって俺が本気で帝国騎士団に戻るつもりだ、なんて考えてないだろうし。

適当に暇を潰すだけだと思えば、どうと言うこともない。

「…そうか」

それなのに、ルルシーは真剣そのものの表情だった。

次にルルシーがなんて言うか、色々なパターンを予想したが…。

「…じゃあ、俺も一緒に帝国騎士団に戻る。異論は認めない」

「…」

…そのパターンは、さすがの俺もちょっと予想外でしたね。

てっきり止められるとばかり思ってなので、そう来たかー、って感じです。
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