The previous night of the world revolution~F.D.~
しかし、それを態度に出す俺ではない。

にっこり笑って、マリーフィアさんに応える。

「ただいま、マリーフィアさん。待っててくれたんですね」

「勿論ですわ。夫の帰りを待つのは、妻として当然ですもの」

えっへん顔。

それはそれは。

「それにしても、今日は遅かったですわね…。お仕事、忙しかったんですの?」

さっきまで、ルルシーとカラオケでデュエットしてましたよ。

…とは、言えないので。

「えぇ。ちょっと…会議が長引きましてね」

嘘です。適当に会議抜け出してきました。

「まぁ、そうなんですの…。今日はどんなお仕事をしましたの?」

出たよ。この質問。

守秘義務があるから話せません、って言っても良いのだが。

そう答えるのは素人ですよ。

俺は玄人なので、もっと上手く答えます。

「帝国騎士団の隊長達と、非常に重要な会議を行ってました」

「まぁ。立派なお仕事をされたんですのね」

「えぇ。国の趨勢を左右する、非常に重要な会議でした」

「…!そんな会議に参加するなんて、さすがルナニアさんですわ」

でしょう?もっと褒めてくれて良いですよ。

…え?無理矢理会議室に押し入っただけだろ、って?

…は?

…え?そんな重要な内容の会議じゃなかったろ、って?

…は?

俺が重要な会議って言ったら、重要な会議なんですよ。

異論は認めない。

「帰りが遅くなって済みませんでした、マリーフィアさん」

「いいえ、構いませんわ。そんな大変なお仕事をされていたなら、仕方ないですもの」

カラオケ行ってたんですけどね。ルルシーと。

いやぁ楽しかった。

俺は、一日の疲れを全く感じさせない、柔らかな笑みを浮かべた。

「そうだ、マリーフィアさん。今度帝国騎士団の創立記念イベントが開催されるんです。マリーフィアさんも招待しますから、一緒に行きましょう」

「えっ。良いんですの?」

「勿論ですよ。デートがてら、一緒に楽しみましょう」

本当は、マリーフィアと一緒になんか行きたくない。

しかし、マリーフィアにも飴を与えておく必要があるからな。

付き合ってあげますよ。面倒ですけど。

飴を与えられたマリーフィアは、目をキラキラ輝かせて喜んでいた。

「嬉しいですわ。わたくし、楽しみにしてますわね」

「良かったです」

「それから、その…ルナニアさん…。お、お願いがあるんですけど…」

突然、マリーフィアはもじもじと、言葉と視線を彷徨わせ始めた。

…何だ。気持ち悪い。

「何ですか?お願いって」

「そ、その…。お疲れでなかったら…良かったら、その…今夜、お部屋で一緒に…」

…あー、はいはい。そういうこと。

つまり、夜のお誘いってことですね。

そんな顔真っ赤にして言わなくて良いですよ。気持ち悪いんで。

ったくこの女、ちょっと前まで処女だった癖に。

自分から強請るようになったとは。凄い進歩じゃないですか。

今ではすっかり、俺の夜のテクの虜ってところですか。
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