The previous night of the world revolution~F.D.~
これがルルシーからのおねだりだったら、大喜びでこの場で押し倒すんだけどなぁ。

如何せんマリーフィアは俺の性癖から外れているので、おねだりされても気持ち悪いだけで、少しも興奮しない。

でも、夜の生活は夫婦間において、非常に大切な重要事項ですからね。

あまりに疎かにすると、離婚事由にもなり得るそうですから。

ちゃんと相手してあげますよ。これも夫の務めです。

「…勿論ですよ、マリーフィアさん。嬉しいです」

俺はにっこりと微笑んで、そう答えた。

「ほ、本当ですのっ…?」

「えぇ。シャワーを浴びて着替えたら、マリーフィアさんの寝室にお邪魔しますね」

「わ、分かりましたわ。お待ちしてますわね」

俺に相手してもらえると分かって、浮き足立つマリーフィア。

けっ。淫乱女が。

先に寝室に戻ると言って、マリーフィアはにこにこと、嬉しそうに戻っていった。

…やれやれ。

じゃ、俺はその前にシャワーでも浴びて…と。

シャワー室に行こうと、廊下を歩き出したその時を。

「あっ…」

「…あ」

曲がり角を曲がったところで、どん、と人にぶつかった。

「メリーディアさん…どうしたんですか?」
 
「あ、いえ、その…」

偶然鉢合わせたメリーディアは、俺の顔を見て口ごもった。

…いや、果たしてこれは本当に偶然なのか。

「帰ってくるの…遅かったのね」

視線を彷徨わせながら、メリーディアが言った。

「仕事…長引いてたの?」

「えぇ、大事な会議がありまして」

ほぼカラオケで歌ってたんですけどね。

「そ、そう…。大変なのね、帝国騎士って…」

「ありがとうございます。でも、こうして家に帰って家族の顔を見ると、疲れも吹き飛びますよ」

あながち嘘じゃないですよ、この台詞は。

どんなに疲れてても、ルルシーの顔を見たら、疲労は吹き飛びますからね。

ついでに性欲がムラムラ湧いてきます。

「そう…。家族…」

意味深に呟くメリーディア。

…ふーん…。

「そうだ、今度帝国騎士団の創立記念イベントが開催されるんですけど…。メリーディアさんも一緒に行きませんか?」

俺は、「業務用」の笑みを浮かべてメリーディアを誘った。

「え…?」

きょとんとして、こちらを見上げるメリーディア。

「楽しいイベントをたくさん企画してるんです。マリーフィアさんも誘ったんですよ。メリーディアさんも一緒にどうですか?」

「え…。な…何で私も…?」

「何でって…。家族だからですよ」

何を当たり前のことを、と言わんばかりに、笑顔で言う。

「…家族…」

「言ったでしょう?俺はメリーディアさんとも仲良くしたいんです。だって、家族ですから。家族皆で行きましょうよ、きっと楽しいですよ」

ここぞとばかりに、「家族」という言葉を連呼する。

この言葉がメリーディアに効果覿面なのは、既に実証済みである。
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