The previous night of the world revolution~F.D.~
本日の天気は晴天である。

そのお陰か、イベント会場周辺は、大層な賑わいぶりである。

俺の功績ですね。

俺は関与してないけど、今頃一日帝国騎士体験イベントも始まっているだろう。

当選したちびっ子達には、是非とも今回の体験イベントで、帝国騎士に絶望して将来の進路を変えて欲しいものですね。

で、イベント会場周辺で、マリーフィア、メリーディアと共に屋台巡りをしている俺は。

「うぅ…。何だか嫌な匂いですわ…」

あっちの店は綿あめ、こっちの店は焼きそばとたこ焼き。

向こうの店はイカ焼きで、向かいの店はベビーカステラ。

屋台特有の様々な匂いが、熱気と共に混ざり合って、何とも言えない独特な匂いを漂わせている。

人によれば、テンションが上がる匂いだと思うが。

生粋のお嬢様であるマリーフィアにとっては、「嫌な匂い」として認識されているようだ。

「そうですか?色んな匂いがして、うきうきしません?」

「うきうき…?全然しませんわ。ゴミ処理場みたいな匂いですもの」

お前は屋台の店主全員に土下座して謝れ。

「メリーディアさんは?平気ですか」

同じくお嬢様のメリーディアも、この匂いに辟易しているかと思ったが。

「私…?別に平気よ」

とのこと。

「お姉様は平気なんですの?羨ましいですわ…。やっぱり、お姉様は半分庶民の血を引いているから、こういった人混みや、匂いにも耐性があるんですのね」

「…」

「…?」

マリーフィアの突然の攻撃に、俺もメリーディアも固まったが。

当のマリーフィアは、全然そんなつもりはなかったらしく。

突然俺とメリーディアが固まったことに、首を傾げていた。

…こいつ、これ、天然で言ってんの?

悪意のない悪口ほど、タチの悪いものはない。

どうしてくれるんだ。雰囲気が悪くなってしまうじゃないか。

大体、屋台の匂いに耐性があるかどうかなんて、生まれは関係ないだろう。

俺だってウィスタリア家の生まれで、生粋の上級貴族ですけど。

屋台の匂い、全然平気ですよ。むしろわくわくする。

お前が苦手なだけだろ。生まれと育ちのせいにするな。

全く、どうしてくれるんだ。この微妙な空気。

…すると、その時。

何処からか、聞き覚えのある声がした。

「うぉぉー!アイ公!あれ!アリューシャ、あれ欲しい!」

「あぁ、たこ焼きだね。良いよ、買ってあげようね」

「やったぜ!」

…この声は。

振り向くと、そこには見覚えのある二人がいた。

勿論、『青薔薇連合会』の幹部仲間の、アイズとアリューシャである。

わー。二人も来てたんですね。

めっちゃ声掛けたいんですけど、今マリーフィアとメリーディアを連れてるから、声をかけたくても出来ない。

ぐぬぬ。もどかしい。

アリューシャはともかく、アイズは俺が見ていることに気づいてるでしょうね。

きっと向こうも俺に声をかけたいんだろうけど、俺がマリーフィアとメリーディアを連れているのを見て、控えてくれてるんだろう。

その気遣いが有り難いけど、何とも言えない切なさを感じる。
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