The previous night of the world revolution~F.D.~
代わりに、二人の仲良さそうな姿を観察することにする。

「はい、アリューシャ。熱いから気をつけて、ふーふーして食べてね」

「よっしゃ、任せろ。ひっひっふー、ひっひっふー」

「ラマーズ法だねー」

なんとも微笑ましい、アイズとアリューシャのやり取りである。

「もう冷めた?」

「はい、じゃあ食べても良いよ」

「やったぜ!いっただっきま…。…」

「?どうしたの、アリューシャ」

「…やっべ。アリューシャ、たこ嫌いなんだった」

「…」

たこが嫌いなのに、何故たこ焼きを買ってしまったのか。

多分、丸っこくて食べやすそう、良い匂いするし美味しそうと思って、見切り発車で購入したのは良いものの。

食べる直前になって、そういえばたこ嫌いなんだったって思い出したんだろうな。

「どうしよ〜、アイ公…。…たこ、池の鯉にやろうか?」

たこだけ捨てよう、とは言わないのがアリューシャの良いところである。

「大丈夫だよ、アリューシャ。たこは私が食べてあげるから、アリューシャはたこ焼き…の、焼きの部分だけ食べてごらん」

「やったぜ!アイ公超好き!」

良かったですね、アリューシャ。

非常に微笑ましいやり取りだが、同じくそれを見ていたマリーフィアは。

「…何なんですの?あの人達…。…変わった人達ですわ」

俺の大切な、頼もしい仲間達ですよ。

変わった人達と称されるのは心外ですね。

あなた、あのアリューシャに本気で狙われたら、一分も生きていられませんよ。

…更に。

「うーん。美味しー!」

「焼きとうもろこしですか…。シンプルな料理ですが、良い匂いですね」

「がぶっと言っちゃってよ、ルーチェス君。いつもベッドで私を食べる時みたいに、がぶーっと」

「成程、それは非常に良い例えですね。じゃあこの焼きとうもろこしをセカイさんだと思って…いただきます」

向こうには、ダイナミックに焼きとうもろこしにかじりつく、見慣れた姿が。

「み、見てくださいな、ルナニアさん。あのお二人、とうもろこしにかじりついてますわ」

マリーフィアも気づいたようだ。

「えぇ、豪快ですね」

「若い女性が、殿方の前であんなに大きく口を開けて…!はしたないですわ」

…何処が?

にっこにこと焼きとうもろこしにかじりつく姿、魅力的だと思いますけどね。

ルーチェスの嫁じゃなかったら、俺のハーレム会員に加えたかったですよ。

「そう…?別に、人それぞれだと思うけど」

メリーディアは、非常に寛容だったが。

マリーフィアには信じられないようで。

「有り得ませんわ。大体、とうもろこしなんて家畜の飼料でしょう?」

あなたは、全国のとうもろこし好きな人に土下座して謝れ。

美味しいじゃないですか、とうもろこし。ねぇ?

「あれは庶民の食べ物ですわ…」

「…そうですか…?」

豪快にとうもろこしにかじりついてるあの青年、実は元ベルガモット王家の王子様なんですけどね。

あなたより、断然育ちの良いルーチェスでさえ、焼きとうもろこしの味が分かるというのに…。

偏見は人の視野を狭くするっていうのは、本当ですね。
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