The previous night of the world revolution~F.D.~
「ふむふむ、美味しいですね。ちょっと醤油を効かせてるのがポイント高いです」

「でしょー?」

「他には何食べます?」

「うーん、そうだな〜…。よし、今度はチョコバナナにしよっと!こっちもがぶっと食べちゃうよー」

ルーチェスとルーチェス嫁は、焼きとうもろこしを片手に、今度はチョコバナナを売る屋台に向かった。

豪快にかじりつくタイプの食べ物ばかりですね。

「チョコバナナ、ですって…。お姉様、そんな食べ物ご存知?」

「さぁ…。聞いたことはあるけど、食べたことは…」

無知な姉妹である。

人生で、チョコバナナさえ知らないとは。

「お姉様も知りませんのね。ルナニアさんはご存知ですの?」

「バナナにチョコレートをかけて、チョコスプレーを散らした食べ物のことですよ」

「まぁ…。バナナにチョコレートをかけただけ?そんな粗末な食べ物を…。…やっぱり庶民の食べ物ですわね」

チョコバナナ好きにも謝れ。土下座しろ。

庶民だろうが貴族だろうが王太子だろうが、チョコバナナ食べて何が悪いんだ。なぁ?

「そんなこと、気にしなくても…。個人が好きなものを食べたら良いと思うけど」

メリーディアの方が、よっぽど柔軟な考え方をしてる。

その通りですよ。

「屋外で食事するのは不衛生ですし、わたくしは結構ですわ。それより…あっちのお店の方が気になりますわ」

焼きとうもろこし好きとチョコバナナ好きどころか。

この場で屋台料理を食べている、全ての人々を敵に回したな。

極悪人ですよ。

マリーフィアは、路上でハンドメイドアクセサリーを売っているお店に近寄っていった。

「いらっしゃいませー」

売り子のお姉さんが、にっこりと接客。

「へぇ、なかなかお洒落ですわね…」

マリーフィアは、売り物のピアスやネックレスを、まじまじと見つめた。

屋台料理や嫌だけど、ハンドメイドアクセサリーは良いんですね。

「でも、これ…宝石じゃありませんわね」

「え?え、えぇ…。手作りのレジンアクセサリーで…」

「れじん…?よく分かりませんけど、何だか安っぽいですわ」

「…」

そりゃあ、カミーリア家のお嬢様として、幼い頃から本物の宝石に囲まれて育ったマリーフィアにとっては。

ましてや、『ローズ・ブルーダイヤ』を知っているマリーフィアにとっては、ハンドメイドのレジンアクセサリーなんて、安っぽく見えるのかもしれないが。

だからって、それを売り子の前で言うか?

非常識にも程がある。

さすがの俺もドン引きしていると、メリーディアもヤバいと思ったらしく。

「す、済みません…」

マリーフィアの非礼を、代わりにメリーディアが謝罪した。

「い、いえ…。よ、良かったら見ていってください…」

安っぽいとまで言われたのに、ブチギレるどころか、何とか笑顔を浮かべてそう言ってくれた。

やれやれ。…傍迷惑なお嬢様ですよ。

ここは、俺がフォローしましょうかね。

「折角ですから、何か買っていきましょうか…。ほら、これなんてマリーフィアさんにお似合いですよ」

俺は、適当に選んだピンクのレジンピアスを手に取った。
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