The previous night of the world revolution~F.D.~
「いやぁ、シュノさん格好良いですね。RPGゲームで序盤のイベントに出てくる絶対倒せない敵みたいですね」

ルレイアの例えが的確。

でも、言いたいことは分かる。

とにかくめっちゃ強そうでヤバい。

帝国騎士達も、雰囲気でそれを察したらしく。

「え…な、何なんだ…?」

「応援って、一体誰が呼んだんだよ?」

一瞬にして狼狽え、動揺が広がった。

…しかし、もう時は遅い。

「…あなた達、一人も逃さないわ」

シュノの身体が動くなり、一人また一人と、千切っては投げ、千切っては投げ。

圧倒的な強さを誇るシュノの前に、一人残らずなぎ倒されていった。

数の不利など、まるでものともしない。

シュノ、快進撃。

「改めて見ると…。…強いな」

「シュノさんは強いですよ」

当たり前のことのように、さらっと言うルレイア。

…ルレイアが人のことを、素直に「強い」と評価するのも珍しいよな。

シュノは、ルレイアに強さを認められるほどの実力だということだ。

『青薔薇連合会』唯一の女性幹部ということで、敵からは舐められがちなシュノだが。

味方の中で、シュノを侮る者は一人もいない。

シュノの強さは、あのルレイアをして、「戦いたくない」と言わしめるくらいだからな。

俺だって、例え模擬戦だとしても、シュノと戦うなんて御免だぞ。

絶対タダじゃ済まないもん。

見てみろよ、実際。目の前の光景を。

「うわぁぁぁ!助けてくれぇぇ!」

「な、何なんだあの強さは!?バケモノか!?」

「逃げろ!すぐに逃げるんだ!」

「応援を呼んでくれ!すぐ応援を…うわぁぁぁ!」

阿鼻叫喚である。

「ぷーくすくす。あれが天下の帝国騎士の姿ですか。お笑いですねぇ」

ルレイアだけが、めちゃくちゃ楽しそうだった。

お前…他人事だと思って…。

よくよく見たら、シュノが随分手加減しているのは明白だった。

これはあくまで「訓練」なのであって、本気で殺すつもりはない。

故に、シュノが使っている弾は、アリューシャのと同じくただの麻酔弾。

あるいはただの峰打ちで、帝国騎士達を残らず失神させていた。

殺すのは簡単だが、殺さないように気絶させるのは非常に骨が折れる。

それを、ああも軽々と、まるで赤子の手をひねるかのごとくやり遂げているのだ。

シュノの実力の高さを伺い知れるというものだ。

…しかし。

「急いで逃げろ!応援を呼ぶんだ!」

「…くっ…!」

一瞬の隙をついて、シュノの魔の手から逃れた帝国騎士が、廊下の向こうに走って逃げようとした。

だが、問題はなかった。

逃げようとした帝国騎士は、背後から首の後ろを手刀で殴られ、昏倒してその場に気絶した。

「…ふぅ。間に合ったな」

「…逃しませんよ」

シュノを守るようにして、更に二人の死神が現れた。

一人は、俺の右腕であり、『青薔薇連合会』準幹部のルヴィア。

そしてもう一人は、そのルヴィアの義理の姉であり、こちらも『青薔薇連合会』準幹部の華弦だった。

…こいつらも来てたのか。
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