The previous night of the world revolution~F.D.~
突如無線機から聞こえてきた、生きた人間のものとは思えない声に。

帝国騎士達は、度肝を抜かして無線機を放り投げた。

しかし、その無線機から、鳴り止まぬ呪いの声が…。

『エェェン、ム、ハン、ブ、ザァァァイ、シ、ボウ、ハン、ジュォォァァァ』

「ぎゃぁぁぁぁ!」

大の大人が、思わず悲鳴をあげるレベル。

…あれはこえーよ。

「ルレイア…。一応聞いておくが、あれは一体…」

「ルヴィアさん嫁に頼んだんですよ。事前に録音させてもらいました」

楽しそうに、ケロッと答えるルレイア。

何処かで聞いたことのある声だと思ったら、ルヴィア嫁の声かよ。

その証拠に、無線機から聞こえてくる呪いの歌を聞いたルヴィアと華弦が。

「フューニャの声だ…。無線機越しに聞いても可愛いなぁ…」

「えぇ、同感です。さすが私の可愛い妹です」

二人共、超ほっこりした顔でしみじみと呟いていた。

…これを聞いて「可愛い」と表現出来るなんて。どんな感性してるんだ?

「これ…聞いたら呪われるとか、三日以内に死ぬとか、そういう類じゃないよな…?」

もしそうだとしたら、ここで隠れて聞いてる俺達にも被害が及ぶぞ。

しかし、ルレイアはとんでもないという風に手を振った。

「まさか。これは箱庭帝国で、古来から結婚式や誕生日などのお祝いの日に歌われる、祝福の歌なんですよ」

これが祝福って、嘘だろ?

完全に呪いの歌じゃん。

ジュオアァァァって言ってたぞ。

恐ろしき、箱庭帝国の文化。

種明かしをしたら、いくぶんか恐怖は薄らぐが。

そんな事情は一切知らない帝国騎士達は、無線機から聞こえてくる呪いの歌(実は祝福の歌)に、大パニック。

「うわぁぁぁ!許してくれ!助けてくれぇぇ!」

「お、落ち着け!これは敵の罠だ、落ち着け!」

「お、俺は何もしてない!何もしてないんだぁぁ!」

「神様!助けて!神様…お母さーん!」

…大の大人が。帝国騎士ともあろう者が。

無線機を放り出して、お母さんを呼びつつへっぴり腰で逃げ出す。

彼らが真剣に怖がっているのは分かるが、傍目から見ていると、非常に滑稽極まりない。

「傑作!傑作ですよコレ。見ましたルルシー?これが帝国騎士の有り様!」

「ルレイア…お前…」

大歓喜。

これが、ルレイアの用意した「避難訓練」なのである。

『青薔薇連合会』の仲間達を招集して、総力を決して帝国騎士団を襲う。

マンネリ化した避難訓練に新たな刺激を与え、より一層、帝国騎士達の気を引き締める為に計画した…のだが。

…なんつーか。

…帝国騎士の皆さんのトラウマにならないか、切実に心配である。
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