The previous night of the world revolution~F.D.~
屋敷の中に入ると、待ってましたと言わんばかりに、マリーフィアが抱きついてきた。

「ルナニアさん…!お帰りなさいませ」

「ただいま、マリーフィアさん。…待っててくれたんですか?」

「はい。窓からルナニアさんの姿が見えて…。部屋から飛び出してきたんですわ」

犬かよ。

俺は犬より猫派、猫よりルルシー派なのだが?

「ありがとうございます。今日はお土産があるんですよ」

「え、お土産?」

「はい。プリンなんですけど…食べますか?」

「えぇ、勿論。とっても嬉しいですわ、ルナニアさん…。…でも」

でも?

マリーフィアは声を潜め、不安そうな顔で尋ねた。

「窓から見えたんですけど…さっき、お姉様とお喋りしてましたわよね?」

そんなところまで見るなよ。

「え?はい…」

「どんなお喋りをしてたんですの?」

どんな…って。 

偶然鉢合わせしたから、軽く口説いてきただけですけど。

それが何か?

「?別に…。今日はメリーディアさんもお出掛けしてたんですね、ってことと…。それから、メリーディアさんにもお土産のプリンを渡しただけですよ」

「それだけ?それだけですの?」

「それだけですよ…。…って、マリーフィアさん、もしかして嫉妬してるんですか?」

「…」

もじもじ、と視線を彷徨わせるマリーフィア。

きっしょ。

女の嫉妬は見苦しいですよ。

男の嫉妬はもっと見苦しいですけどね。

「だって…ルナニアさん、お姉様と仲良くしてらっしゃるみたいですし…」

「そんな…家族として、普通に接してるだけですよ…。俺が好きなのはる、マリーフィアさんだけですから」

「…る?」

ごめん。今ちょっと、ルルシーって言いかけちゃった。

本音がポロリするところでした。

「俺が好きなのはマリーフィアさんだけですよ」

改めて言い直し。

「…本当に?」

「本当ですよ。だから、嫉妬なんかしなくて良いんですよ」

「そ、そうですの…。そうですわよね」

頬を赤く染めて、もじもじ。

その仕草、可愛いと思ってやってんのか?

醜いだけだぞ。小娘。

「ごめんなさい、ルナニアさん…。わたくし、ちょっと不安になってしまって…」

「全くもう…困った人ですね。俺のお姫様は」

耳元で甘く囁き、これみよがしに頬に軽くキスしてやると。

それだけで耳まで真っ赤になるのだから、やはりこの女はチョロい。

「さぁ、部屋に行きましょう。一緒にお土産のプリンを食べましょうよ」

「えぇ。勿論ですわ」

頬を赤く染めながら、マリーフィアはにっこりと微笑んだ。

はい、洗脳完了。

『白亜の塔』なんかより、ずっと効果覿面だろう?
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