The previous night of the world revolution~F.D.~
「そうだったんですね。…楽しかったですか?」

「えぇ、とっても。…ついでですから、一緒に招待状もプレゼントしたんですのよ」

…招待状?

「…?招待状って、何のことですか?」

「あら?ルナニアさんには、まだお話していなかったかしら…。来週、お母様の誕生パーティーを開くんですのよ」

おい。それは初耳だぞ。

俺は一瞬にして、緩んでいた気を引き締めた。

今日の楽しい「避難訓練」に、まだまだ浮かれていたい気分だったが。

残念ながら、そうは行かないようだ。

「ユリーフィアお義母様の誕生日が近いことは分かってますよ…。以前、教えてくれましたからね」

だが、それはまだ、あと二週間は先のはずだった。

だから、まだ大丈夫だとたかを括っていたのだが…。

「一週間早めに誕生日会をするんですね?」

「えぇ、そうですの。誕生日当日はお母様、海外旅行に行く予定ですから」

娘は、大学の講義をすっぽかして友達とランチに行き。

母親は、誕生日パーティーを早めてまで、優雅に海外旅行と洒落込むとは。

この母親あってこの娘、って感じだな。

「誕生日パーティー、ルナニアさんも参加してくださいますわよね?」

「勿論ですよ。大事なお義母様の誕生日ですからね」

その為に、わざわざ大変な苦労をしてこの家に潜り込んだのだ。

全ては、その誕生日パーティーの為に。

勿論参加させていただきますよ。当然です。

「パーティー当日に着るドレスは、もう決めてるんですか?」

いきなり話の核心をついたら怪しまれるので、敢えてドレスの話をして、軽いジャブを放つ。

「えぇ。この間お友達とお買い物に行った時に、素敵なドレスを見つけましたの。それを着るつもりですわ」

マリーフィアは気を良くしたらしく、嬉しそうに答えた。

ふーん。お前の少女趣味には、微塵も興味ないですけど。

「それは楽しみですね。まだ見せてもらえないんですか?」

「そんな…。当日のお楽しみですわ」

「そうですよね…。きっとさぞかし可愛らしいんでしょうね。今から楽しみで眠れませんよ」

「うふふ…」

うふふじゃねーよ。キモい。

もう少しジャブを放ってからにするつもりだったが。

吐き気を催しそうになってきたので、もう一番大事なことを聞く。

「そういえばユリーフィアお義母様の誕生日パーティー…。ということは、例の…宝物庫に入るのも、その日なんですよね」

俺は、さり気ない風を装って尋ねた。

「えぇ、そうですわ。当主であるお母様と、その跡継ぎであるわたくしだけが入れますの」

…成程ね。

つまり、その時宝物庫に入って、初めて。

マリーフィアとユリーフィア母は、『ローズ・ブルーダイヤ』が何者かに盗まれていることを知る訳だ。
 
だから、俺はその日までに、何とかして宝物庫に忍び込み。

今、俺の手にある『ローズ・ブルーダイヤ』を、宝物庫のあるべき場所に戻しておかなければならない。

それで、ミッションコンプリートだ。
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