The previous night of the world revolution~F.D.~
ユリーフィア母の海外旅行のせいで、予定が少し早まってしまった。
もうぐずぐずしていられない。一刻の猶予もない。
俺は席を立ち、マリーフィアの隣に、寄り添うようにして腰掛けた。
「る…ルナニアさん?どうしたんですの?いきなり…」
「…」
ちょっと、一気に余裕がなくなってきたんでね。
俺も強引に行かせてもらいますよ。
大丈夫。いつこうなっても良いように、これまでちゃんと「下準備」を重ねてきた。
「つかぬことをお尋ねしますが…」
「は、はい?」
「以前、屋敷の中を迷って宝物庫を見たとき、随分物々しい警備だなと思ったんですが…。あれは、誰が管理してるんですか?ユリーフィアお義母様ですか?」
「管理…ですか?えぇ、宝物庫の鍵は、お母様が持ってますわ。スペアキーは一つもありませんのよ」
「そうですか。大事な宝物庫ですもんね…。それなら安心ですね」
当然ですわ、と言わんばかりに自慢げなマリーフィア。
お前の功績じゃないけどな。
「宝物庫の中には、確か、特に大切な宝石が置いてあるんでしたよね。えぇと、ローズダイヤ…でしたっけ?」
すっとぼけ。
「『ローズ・ブルーダイヤ』ですわ」
「そう、それそれ…。俺は見たことないんですけど、マリーフィアさんは見たことあるんですか?」
「えぇ。『ローズ・ブルーダイヤ』の箱の開け方は、わたくしとお母様しか知りませんもの」
「へぇ…。きっと複雑な開け方なんでしょうね」
「そうなんですのよ。防犯の為ですから、仕方ないとは分かっていますけど…。ああも複雑だと、開けるのに戸惑ってしまいますわ」
じゃあそんな箱に入れんな。と、声を大にして言いたい。
しかも、箱ごと盗まれてるんじゃ、防犯の意味ないだろ。
「そんな難しい開け方を、一回で覚えたんですか?凄いですね」
そんな優秀な頭があるなら、大学の講義やレポートくらい自分でやれ、と言いたいところだが。
しかし、マリーフィアの頭がそんなに賢いはずがなかった。
「いえ…。ここだけの話ですけどね、わたくし、これまでもお母様の誕生日の度に、何回も『ローズ・ブルーダイヤ』のジュエリーボックスの開け方を見せてもらったんですけど…」
「…けど?」
「あまりに複雑で、何回見ても覚えられなくて…」
照れ隠しのつもりなのか、うふふ、と微笑んでいた。
…笑って言うことじゃないだろ。
己の馬鹿さ加減を、笑って誤魔化せるとでも?
「それを正直に話したら、お母様もそうだったんですって」
馬鹿親子乙。
「そして、こっそり手引き書をくださったんですわ」
「…手引き書?」
「ジュエリーボックスの開け方を記した、指南書ですわ」
…何だと。
これは非常に大きな情報である。
…だが、同時に…そんなことじゃないかと思っていた。
マリーフィアや、マリーフィアとそっくりなユリーフィア母と一緒に生活して。
この二人の性格や、日常の生活態度を見るに。
この馬鹿親子の血筋が、複雑なからくり箱の開け方を、一度や二度見るだけでマスター出来るとは思えなかったからである。
もうぐずぐずしていられない。一刻の猶予もない。
俺は席を立ち、マリーフィアの隣に、寄り添うようにして腰掛けた。
「る…ルナニアさん?どうしたんですの?いきなり…」
「…」
ちょっと、一気に余裕がなくなってきたんでね。
俺も強引に行かせてもらいますよ。
大丈夫。いつこうなっても良いように、これまでちゃんと「下準備」を重ねてきた。
「つかぬことをお尋ねしますが…」
「は、はい?」
「以前、屋敷の中を迷って宝物庫を見たとき、随分物々しい警備だなと思ったんですが…。あれは、誰が管理してるんですか?ユリーフィアお義母様ですか?」
「管理…ですか?えぇ、宝物庫の鍵は、お母様が持ってますわ。スペアキーは一つもありませんのよ」
「そうですか。大事な宝物庫ですもんね…。それなら安心ですね」
当然ですわ、と言わんばかりに自慢げなマリーフィア。
お前の功績じゃないけどな。
「宝物庫の中には、確か、特に大切な宝石が置いてあるんでしたよね。えぇと、ローズダイヤ…でしたっけ?」
すっとぼけ。
「『ローズ・ブルーダイヤ』ですわ」
「そう、それそれ…。俺は見たことないんですけど、マリーフィアさんは見たことあるんですか?」
「えぇ。『ローズ・ブルーダイヤ』の箱の開け方は、わたくしとお母様しか知りませんもの」
「へぇ…。きっと複雑な開け方なんでしょうね」
「そうなんですのよ。防犯の為ですから、仕方ないとは分かっていますけど…。ああも複雑だと、開けるのに戸惑ってしまいますわ」
じゃあそんな箱に入れんな。と、声を大にして言いたい。
しかも、箱ごと盗まれてるんじゃ、防犯の意味ないだろ。
「そんな難しい開け方を、一回で覚えたんですか?凄いですね」
そんな優秀な頭があるなら、大学の講義やレポートくらい自分でやれ、と言いたいところだが。
しかし、マリーフィアの頭がそんなに賢いはずがなかった。
「いえ…。ここだけの話ですけどね、わたくし、これまでもお母様の誕生日の度に、何回も『ローズ・ブルーダイヤ』のジュエリーボックスの開け方を見せてもらったんですけど…」
「…けど?」
「あまりに複雑で、何回見ても覚えられなくて…」
照れ隠しのつもりなのか、うふふ、と微笑んでいた。
…笑って言うことじゃないだろ。
己の馬鹿さ加減を、笑って誤魔化せるとでも?
「それを正直に話したら、お母様もそうだったんですって」
馬鹿親子乙。
「そして、こっそり手引き書をくださったんですわ」
「…手引き書?」
「ジュエリーボックスの開け方を記した、指南書ですわ」
…何だと。
これは非常に大きな情報である。
…だが、同時に…そんなことじゃないかと思っていた。
マリーフィアや、マリーフィアとそっくりなユリーフィア母と一緒に生活して。
この二人の性格や、日常の生活態度を見るに。
この馬鹿親子の血筋が、複雑なからくり箱の開け方を、一度や二度見るだけでマスター出来るとは思えなかったからである。