The previous night of the world revolution~F.D.~
迂闊に触っちゃいけない、と言った理由が分かったでしょう?

万が一、間違った操作をしてしまったら。

その時点で、このジュエリーボックスを開けることは二度と出来ない。

何千もの操作を必要とし、しかも一度として操作を間違えられない。

気が遠くなりそうだ。

「で、でも…所詮、木の箱だろ?燃やすなり、無理矢理工具を突っ込んで開けるなり…」

ルルシーったら。過激ですね。

しかし、このからくり箱を作った職人も、そのくらいのことは想定している。

「駄目なんですよ、ルルシー。このからくり箱、特別な加工をした材木を使ってるそうで」

「…どうなってるんだ?」

「火をつけても燃えないし、外部からの衝撃にも非常に強く、工具を刺そうとしても通らないそうです」

凄いですよね。大昔に、そんな技術があったとは。

現在、このジュエリーボックスと同じものを開発することは出来ないそうですよ。

「そ、そんな…。でも、無理矢理…そうだ、それこそルレイアの鎌で一刀両断すれば良いんじゃないか?」

ルルシーったら、ますます過激。

意外と大胆なことを思いつきますね。むっつりスケベですか?

確かに、俺の鎌に切れないものはありません。

しかし、忘れているようですね、ルルシー。

「破壊しちゃ駄目なんですよ、ルルシー。中身の『ローズ・ブルーダイヤ』ごとぶった斬るつもりですか?」

「あっ…」

これが、このジュエリーボックスを開けられない理由の一つでもある。

いくら大昔の技術の粋を集めて作ったからくり箱と言えど、所詮は木の箱。

現代の技術力を持ってすれば、開けられないということはないだろう。

それこそ爆破するなり、特殊な電動カッターで開けるなり、俺の鎌で切り裂くなり。

開けようと思えば、強引な方法を使えば開けられる。

しかしその場合、箱の中にあるダイヤを無傷で取り出せるかどうか、保証することは出来ない。

強引な方法であればあるほど、中にあるダイヤを傷つけてしまう危険性が増す。

繊細な『ローズ・ブルーダイヤ』に、少しでも傷をつけてしまうようなことがあれば、それだけでダイヤの価値は激減する。

ダイヤを傷つけることを恐れる故に、強引な方法でジュエリーボックスを開けられない。

正しい手順でからくり箱を操作して開けること。

これが一番確実で、ダイヤを傷つけずにダイヤを取り出す、唯一の手段なのである。

そしてその手順を知るのは、カミーリア家の直系の一族のみ。

難攻不落、って感じですね。

「成程…。それで、中身を確認出来ないのか…」

「残念ながら、そうなります」

「折角カミーリア家から盗んできても、開けられないんじゃ意味ないだろうに…」

全くですよ。

盗み出した奴は、どうするつもりだったんでしょうね。

「だから、この箱を開けてくれっていう意味で、俺のもとに依頼してきたんだよ」

と、ジュリスさん。

あぁ、成程。

裏社会に顔が広いジュリスさんなら、秘密裏にこのジュエリーボックスを開けられる鍵開け職人を知ってるんじゃないか、って?

実に浅はかと言うか…行き当たりばったりな犯行ですね。
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