The previous night of the world revolution~F.D.~
「ウチは武器屋であって、鍵屋じゃない。そう言って突き返してやりたかったんだが…」

「突き返さなかったんですね、ジュリスさん。どうしてですか?」

「…」

ジュリスさんは、じっと俺の顔を見つめた。

…お?

「…良いか、ここから先はウチの…『オプスキュリテ』の信用に関わる話だ。くれぐれも慎重に対応してくれ」

ほう。そう来ますか。

「良いですよ。勿論…俺達とあなた方の仲じゃないですか」

そこまで信頼して打ち明けてくれるなら、こちらも誠意ってものをお見せしますよ。

俺は死神であっても、鬼じゃありませんからね。

「じゃあ、信用して話すぞ…。…この『ローズ・ブルーダイヤ』を持ってきたのは、『青薔薇連合会』の構成員だ」

「えっ…!」

ルルシー、またしてもびっくり。

…ふーん。そう来ましたか。

まぁ、ジュリスさんが、わざわざこんなところに俺を呼び出した時点で。

とんでもない地雷が埋まってるんだろうってことは分かってましたよ。

しかしまた、蓋を開けてみるとなかなか強烈ですね。

「そんな、馬鹿な…!そのダイヤを盗み出したのは…ウチの…『青薔薇連合会』の人間だって言うのか…!?」

「あぁ、そうだ」

「…!」

ルルシーが今、何を考えてるのか分かりますよ。

何処の馬鹿だ、そいつは、って思ってるんでしょう?

俺も同じこと考えてるから大丈夫ですよ。

「誰なんだ?その馬鹿。何処の馬鹿がそんなことをした?ウチの構成員なんだろう?名前は…」

「ちょっと落ち着いてくれよ。気持ちは分かるが」

「うっ…。す、済まん…」

食い気味に尋ねるルルシーを、ジュリスさんが溜め息混じりに制止した。

そうそう、落ち着きましょうよルルシー。

そんな馬鹿なことをした愚か者は、見つけ次第、俺が死神の鎌の錆にしてやりますから。

「残念ながら、名前までは聞いてない。聞いても教えるつもりはなかっただろうからな」

「そ…そうか…」

残念ですね。

名前を出せばバレる、と分かっていたんでしょう。さすがに。

「だが、全く素性を明かさないんじゃ、こっちも信用出来ないからな。しつこく尋ねたら吐いたよ。…自分は『青薔薇連合会』の人間だって」

「…」

「だが、同じ『青薔薇連合会』でも、あんたらとは派閥が違う。確か、旧『青薔薇連合会』派の…」

「『ブルーローズ・ユニオン』ですか?」

「それだ」

「…」

俺とルルシーは、無言で顔を見合わせた。

成程、そういうことですか。

『青薔薇連合会』は『青薔薇連合会』でも、俺達が所属するヴァルレンシー派の『青薔薇連合会』ではなく。

サナリ派の系統を継ぐ、セルテリシア率いる『ブルーローズ・ユニオン』の構成員。

同じ組織と言えど、俺やルルシーにとっては、敵対する組織のメンバーという訳だ。

…やれやれ。とんでもないことをやってくれたものですね。
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