The previous night of the world revolution~F.D.~
さてと。どう説明したものですかね。

やっぱり、実演してみせる方が良いですよね。

「はい、ルルシー」

「え。あ、は?」

俺はルルシーに、ジュエリーボックスを押し付けた。

ルルシーは受け取ったものの、まるで核爆弾でも持たされたかのように戸惑っていた。

「開けてみてください。ルルシーが」

「はっ…?いや、無理に決まってるだろ?俺はこのからくり箱の開け方なんて…」

「そう言わず、開けてみてくださいよ。…大丈夫、ルルシーにも出来ますから」

「いや、そんなはず…。…あれ?」

ルルシーは、じっと手元のジュエリーボックスを見つめた。

箱の蓋の部分が、少し緩んでいるのを見つけたらしい。

怪訝そうな顔をしながら、ルルシーはその蓋を、そっと横にずらした。

すると。

かぱっ、と、あまりにもあっさり、あまりにも呆気なく、ジュエリーボックスが開いた。

「…」

これには、ルルシーも目を真ん丸にして固まっていた。

その顔も最高に素敵ですね。

ルルシーにとっては、狐につままれたも同然なんでしょうけど。

「…ね?ルルシーでも開けられるって言ったでしょう?」

何せ、昨日俺が一度その箱を開けただけで。

蓋にガタが来て、半ば壊れちゃってましたから。

何なら、今すぐ道のど真ん中にぶん投げるだけで、粉々に壊れるんじゃないでしょうか。

「う…嘘だろ?これ…簡単には開けられないんじゃなかったのか…!?」

「うん。そう言われてましたね…」

「つーか、中身は?箱の中身…『ローズ・ブルーダイヤ』は何処だよ?」

「さっき見せたでしょう?あれです」

「…!?」

俺が何を言ってるのか、理解出来ていない様子のルルシー。

だから、『青薔薇連合会』に帰ってゆっくり事情を説明しようと思ったのに。

急かしたルルシーが悪いんですからね。全くもう。

「そのジュエリーボックスは、ジュリスさんから託されたものです。どうやら彼は、偽物を掴まされたようですね」

「偽物…!?じゃあ…宝物庫から盗まれた『ローズ・ブルーダイヤ』は、偽物だったってことなのか?」

「…それはちょっと違いますね」

なんと言いますか。非常に口惜しいんですが…。

俺がこの3ヶ月あまり、やっていたことは全部…無意味、無駄だったんですよ。

「結論から言いますと…最初から、『ローズ・ブルーダイヤ』は誰にも盗まれていなかったんです」

「…!?」

『ローズ・ブルーダイヤ』は何事もなく、カミーリア家の宝物庫の中に安置されていた。

昨日宝物庫に入って、俺はそれをこの目で確認した。

そこで、ジュリスさんから託された、盗まれた『ローズ・ブルーダイヤ』のジュエリーボックスを開けてみた。

複雑なからくり箱と聞いていたのに、偽物の方は、少し力を入れて蓋をずらすだけで、あっという間に開いた。

そして、そこに入っていたのは、『ローズ・ブルーダイヤ』によく似た、真っ赤な偽物だった。

ダイヤの形にカットして、青く着色しただけの、ただのガラス玉でしかなかった。

つまり、『ローズ・ブルーダイヤ』が盗み出されたという話は、嘘だったのだ。
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