The previous night of the world revolution~F.D.~
…まぁ、そうなんじゃないかという気はしていた。

カミーリア家の宝物庫は、あまりに強固だ。

確かに、俺は簡単にマリーフィアとユリーフィアを眠らせ。

部屋の中に、無造作に置きっぱなしにしていた宝物庫の鍵、パスワード、そしてからくり箱の開け方を記した手引き書を盗み出した。

その作業は容易く、簡単だったけど、それは俺が入念に下準備をしたからだ。

マリーフィアとユリーフィアの信頼を得て、合法的にカミーリア家に迎え入れられた。

一旦懐に入り込み、充分に油断させたからこそ、あんなに容易く宝物庫に入り込めたのだ。

そうじゃなかったら、とてもじゃないけど無理だ。

マリーフィアとユリーフィア、二人の部屋から鍵とパスワード、指紋、それにからくり箱の手引き書を見つけ出すなんて。

そもそも、あの宝石箱の開け方を記した手引き書の存在を知っている者さえ、ごく少数に限られる。

メリーディアでさえ、知らなかったんじゃないだろうか。

宝物庫の警備があまりに強固なのを知って、どうやってコソ泥共がカミーリア家の宝物庫から、『ローズ・ブルーダイヤ』を盗み出したのか。

俺は、ずっとそれを考えていた。

何処ぞの大怪盗でもない限り、あの強固な宝物庫に入り込むなんて不可能。

だからこそ、俺の中に疑念が湧いたのだ。

ジュリスさんのもとに届けられた、盗まれたという『ローズ・ブルーダイヤ』。

これは、偽物なんじゃないだろうかって。

そして、その推察は当たりだった。

昨晩、俺が宝物庫に入った時。

『ローズ・ブルーダイヤ』は、変わらずそこにあった。

大事そうに安置されていた。全く、何者にも侵されることなく。

つまり、『青薔薇連合会』の手先によってダイヤが盗み出されたという話。

あれは、何者かが俺達を嵌める為に仕掛けた罠だったのだ。

それが誰なのか、知る由もありませんけどね。

「そんな…。じゃあ…『ローズ・ブルーダイヤ』が『青薔薇連合会』によって盗み出されたなんて…嘘だったのか…」

「そうなりますね」

「くそっ…下らない嘘ついて騙しやがって…!その為にルレイアがどんなに苦労したと…」

「まぁまぁ、俺のことは気にしなくて大丈夫ですよ」

確かに、俺のこの数ヶ月は徒労に終わりましたけど。

結局、『青薔薇連合会』の無実が証明されたんだから、目的は達成しました。

口惜しいですが、それだけでも良かったと思おう。
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