The previous night of the world revolution~F.D.~
第12章
ーーーーー…その頃。帝都某所にある、帝国自警団隊舎にて。





その日、帝国騎士団との定期会議に参加していた帝国自警団団長、ブロテ・ルリシアスは。

予定よりも早く、僅か一時間ほどで帰ってきた。

「ただいま。皆」

「ブロテ団長…。…今日は、随分と早かったですね」

私は、思わず彼女にそう声をかけた。

すると、ブロテ団長は苦笑いをしながら答えた。

「それが…今日のオルタンス団長、すっごく落ち込んでて…いつも表情に乏しい人なのに、ああも露骨に落ち込んでたら、こっちも話し合いする気にならなくて」

「…落ち込んでた?」

「聞いたところによると、少し前まで、ルレイア卿が帝国騎士団に戻ってたらしいんだ」

「…!」

私は、それを聞いて愕然とした。

…あの男。恥知らずにも、まさか…。

「あれ?君…ルレイア卿のこと知ってたっけ?」

「っ…。…いえ。噂に聞いてるだけです…。『青薔薇連合会』の幹部だとか…」

「そうだよ。そのルレイア卿が、今日帝国騎士団を退団したらしくて…。それで、オルタンス団長が落ち込んでたみたい」

…ルレイア・ティシェリーが帝国騎士団を出ていったから、落ち込む?

何を馬鹿なことを…。

「会議の最中も溜め息を連発して、『ルレイアがいると楽しかったんだけどな…』って言ってて…。…もう、呆れちゃった」

冗談めかして、楽しそうに話すブロテ団長。

一体何が面白いって言うの?

何であの男のことを、笑いながら話せるの?

「それで、いつもより会議が終わるのも早かったんだよ」

「…ブロテ団長は、それを良しとされたんですか?」

「え?」

「…いえ、何でもありません」

この女も同じだ。

これが、正義を行う帝国自警団の団長か。

結局この女も、ルレイア・ティシェリーに騙されて、洗脳されて。

ルレイア・ティシェリーの脅威に気づいていない。

どれだけあの男の危険性を説いたところで、危機感を抱くこともない。

…話にならない。

「…?どうかした?」

「…何でもありません」

私は、心の中で歯噛みしていた。

もう、役に立たないブロテ・ルリシアスのことは考えていなかった。

それよりも、ルレイア・ティシェリーが帝国騎士団に戻っていたという情報。

私が考えるべきは、こちらの方だ。

嫌な予感が当たっているとしたら…もしかして…。
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