The previous night of the world revolution~F.D.~
『ブルーローズ・ユニオン』の構成員となると、俺達も迂闊に手を出せない。

ましてや、先日のアシュトーリアさん暗殺未遂事件の一件で、あいつらとは微妙な距離感を保っている。

迂闊に『ブルーローズ・ユニオン』のメンバーに手出しすれば、両組織の間にくすぶっている火種に、火をつけることになりかねない。

「『ブルーローズ・ユニオン』の構成員を名乗る連中が、このジュエリーボックスを『オプスキュリテ』に持ってきたんだ。この箱を開けてくれ、そして闇に売りさばいてくれってな」

「…で、ジュリスさんはその返事を保留にした、と?」

「はいそうですか、と引き受ける訳には行かないからな。良いか、俺はあんたらを敵に回したくないんだよ」

ジュリスさんは、いつになく真剣な表情で言った。

「依頼人は『ブルーローズ・ユニオン』のメンバーだ。だかま、俺達『オプスキュリテ』は、あんたらが所属してるアシュトーリア派の『青薔薇連合会』を贔屓にしてる立場だからな」

「だから、密告して信用を損なうリスクを犯してでも、俺達に告げ口することを選んだんですか」

「…仕方ないだろ。信用を失うのは怖いが、それ以上に、あんたらと敵対して組織ごと潰される方が恐ろしい」 

それはそれは。

…賢明な判断ですよ、ジュリスさん。

派閥の違う『ブルーローズ・ユニオン』と言えど、『青薔薇連合会』傘下の構成員が、カミーリア家の家宝に手を出した。

こんな重要な情報を知っていながら、俺達に黙っているようなことがあったら。

…その時は、今後の『オプスキュリテ』との付き合いは、考え直させてもらわなきゃいけないところでした。

ジュリスさんとしても、苦渋の決断だったに違いない。

依頼人の守秘義務は必ず守る。それは、『オプスキュリテ』という組織の信用に関わる問題だから。

しかしジュリスさんは、敢えてその守秘義務を放棄し。

こうして、依頼人の情報を俺達に密告している。

『オプスキュリテ』の信用を損なってでも、これ以上火種が大きくなる前に事態を沈静化して欲しいと、俺達に頼む為に。

…それだけ、この『ローズ・ブルーダイヤ』というブツはヤバいのだ。

「俺達の手には負えない。これ以上、このダイヤの問題に関わるつもりはない」

ジュリスさんは、きっぱりとそう言った。

自分達は、ここで手を引く。

あとは、『青薔薇連合会』の方で何とかしてくれ。

これを盗み出したのは、『青薔薇連合会』の人間なのだから。…ってことですね?

やれやれ。あなたはクレバーな判断をしますよ。

ジュリスさんがそこまで俺達を信用してくれているなら…応えない訳にはいきませんね。

「…分かりました。後のことは、俺達で引き受けます」

「ルレイア…!…良いのか?」

良いも悪いも、こうするしかありませんよ。ルルシー。

本当に『ブルーローズ・ユニオン』のメンバーがカミーリア家に強盗に入ったのなら。

遅かれ早かれ、俺達にも火の粉が降り掛かってくるはずだ。

だったら、大きな家事になる前に、せめてボヤのうちに火を消す。

それが一番賢明な判断だろう。

それに俺だって、貴重な死神の鎌を仕入れてくれる『オプスキュリテ』との関係を悪くしたくありませんしね。

「俺が責任を持ちますよ。この『ローズ・ブルーダイヤ』は、俺が預かります」

「…お前一人には背負わせないぞ。お前が責任を背負うなら、俺も同じものを背負う」

…全く、ルルシーったら。

それだけは譲らないとばかりに、きっぱりと。

相変わらずですね、ルルシー。あなたという人は…。
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