The previous night of the world revolution~F.D.~
「寒いですね、シュノさん。俺の上着着ます?」

「えっ。良いの?」 

「勿論ですよ。どうぞ」 

ルレイアはにっこりと微笑んで、シュノの背中に真っ黒コートを羽織らせた。

マリーフィアに対しては作り笑顔だったルレイアだが、シュノに対しては本物の笑顔である。

ルレイアが本物の笑顔で話しかける女性は、シュノとアシュトーリアさん、あとは部下の華弦くらいだぞ。

「ありがとう、ルレイア…。…えへへ。あったかい…」

ぶかぶかのコートをぎゅっと抱き締めるように羽織って、嬉しそうなシュノである。

良かったな。

「…相変わらずお前は女たらしだな、ルレイア」

「ちょっとルルシー?そこは、女性に優しいと言ってもらえますかね」

お前が女性に優しいのは、シュノと『青薔薇連合会』所属の女性だけだろ。

まぁ良いけどさ。シュノ、すげー嬉しそうだから。

「それにしても寒いよね…。見てよ。アリューシャが丸まっちゃった」

「…こいつ…」

アイズが指差した先では、アリューシャがソファの上でアルマジロみたいに丸まって、タオルケットにくるまっていた。

でっかい饅頭みたいになってる。アリューシャ饅頭。

「こう寒いと、こたつに入りたくなりますねー」

「…そうだな…」

ルレイアが言い、俺が頷くと。

ルリシヤが、まるでその一言を待っていたかのように、ドヤ顔で切り出した。

「あるぞ。こたつ」

えっ?

「こんなこともあろうかと、大人数用のこたつを秋のうちに購入しておいた」

「おっ。さすがルリシヤ。準備が良いですね」

「ふっ。そうだろう?早速出すから手伝ってくれ」

いや、出すって何処に…。

すると、ルリシヤはおもむろに、俺の部屋の物置を開けた。

…は?

「はいはい。じゃあ反対側持ちますねー」

「こたつ布団って、これで良いですよね?」

「あぁ、それだ。あとはこれを延長コードのコンセントに挿して…」

俺の物置から、全く見覚えのない長方形のこたつテーブルと、分厚いこたつ布団が取り出されている。

…そこ、昔の仕事の書類とか入れてたはずなんだけど。

何で、いつの間に、こたつが入れられてんの?

「よし、こたつの完成だ」

「やったー!一番乗り〜。シュノさんもほら。温かいですよ」

「うんっ…」

大喜びでこたつに入る、ルレイアとシュノ。

「アリューシャ。こたつだよ。おいで」

「うーい」

ソファの上で丸まってたアリューシャも、アイズに呼ばれていそいそとこたつにすっぽり潜る。

「やっぱりこたつは温かいですねー」

ルーチェスもご満悦。

「ふっ。皆に喜んでもらえて何よりだ」

ルリシヤ、ドヤ顔。

…お前、寒空の下、外に放り出すぞ。
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