The previous night of the world revolution~F.D.~
しかし。俺の必死の抵抗も虚しく。

「よしっ。始めましょうかー」

ルーチェスによって、キッチンに連れてこられた。

…何で?

「…何を始めるつもりなんだよ?」

「キッチンに来たんだから、料理に決まってるじゃないですか」

いや…それはそうなんだろうけど…。

「こたつと言えば、熱々のおでんですよ。こたつであったまりながら、はふはふと熱いおでんを食べる…。最高でしょう?」

「それは…まぁ、最高だけど…」

ド定番だよな。

冬の風物詩って言うか…。ひと冬に一回はやりたい。

「そういう訳なので、一緒に作りましょう」

…何が「そういう訳」なんだ?

多分ルーチェスなりに丁寧に説明してくれたんだと思うけど、その理解に頭が追いついてない。

「おでんと言えば…ちくわとこんにゃくと大根、それに何より卵!ですよね〜。…あ、ルルシーさんゆで卵作ってください。僕、大根の皮を剥くんで」

「え?あ、うん…」

何でか分からないけど、卵と鍋を押し付けられてしまった。

…。

俺は、そのまま手元の生卵を見下ろした。

「ふざけんな。誰がやるか!」と、卵と鍋をルーチェスに押し付け。

俺はそのまま、自分の部屋に帰る…ということも考えたのだけど。

…ちらりとルーチェスを見ると、器用に包丁を使って、大根の皮を桂剥きしていた。

…あいつ、元王子の癖に、桂剥き上手いな。

しかも、ちゃんと面取りをして、隠し包丁を入れて味を染みやすくしている。

既に熟練の主婦の風格。

…一人で料理の支度をするの、大変だもんな。

俺がここで逃げ帰ったら、ルーチェスが一人でおでん作りを頑張らなきゃいけない。

そう思うと…逃げるに逃げれないじゃん。

…はー…。

…分かったよ。

「…ルーチェス。お前、大根の下処理終わったら、出汁を取ってくれるか?俺、その間にもち巾着と厚揚げの油抜きするよ」

「了解しました!分業ですね!」

…こうして、こいつらのペースに乗せられてしまうから、毎回好き勝手やられるんだろうなぁ…。

でもまぁ、おでんを一人で作るの大変だから…。

今回は協力してあげるよ。はぁ。

さて、それじゃあやるか。
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