The previous night of the world revolution~F.D.~
ところで。

おでんの具って、家庭によって様々だと思うんだけど。

「ルーチェス、それ…豆腐か?」

「はい。お豆腐です」

ルーチェスは木綿豆腐をパックから出して、軽く水切りをしてから。

包丁で一口大に切って、薄く色づいたおでん出汁の中に投入。

へぇ…。おでんに豆腐入れるのか…。

…これってメジャーなんだろうか?

「…美味いの?豆腐…」

「美味しいですよ。我が家のおでんでは定番の具材なんです」

とのこと。

成程…。

確かに、煮物のお豆腐って美味しいし、意外とアリなのかも。

「お豆腐ってお安いですし、結構ボリュームありますし、柔らかくて食べやすいのでおすすめですよ」

「そうなのか…」

これが元皇太子の台詞なんだぜ。信じられるか?

もう完全に主夫。台所を預かる立派な主夫だよ。

一周回って、なんか格好良いな。

「あとは…お芋と、ロールキャベツも入れましょうか」

「芋は分かるけど…ロールキャベツ?」

「これも、うちのセカイさんのお気に入りなんです。肉だねに生姜をたっぷり入れるのが我が家流なんですよ」

そう言って、ルーチェスはひき肉を手で捏ねていた。

おでんに入れるロールキャベツを、わざわざ肉だねから作るのか。

俺だったら横着者だから、冷凍のロールキャベツで良いや、となりそうだが。

手が込んでるなぁ…。

「そういや、お前毎日家で料理作ってるんだよな…」

「はい。僕、我が家のシェフなので」

「大変じゃないか?たまには手抜きしたくなる時も…」

「え、何でですか?大喜びで食べてくれるセカイさんの顔を思い浮かべながら作ったら、全く苦じゃありませんけど」

お前はこの世の主夫の鑑だよ。

まぁ…でも、そうだな…。

俺だって、ルレイアとか…アイズとかアリューシャとかシュノが…喜んで食べてくれる姿を思い浮かべたら。

不思議と悪い気はしないんだよな…。…我ながらチョロい。

これだから、毎回良いようにあいつらに流されるんだけど…。

あれよあれよという間に、ほぼルーチェス主導でおでんの具材の用意が完了。

「はいっ。あとは煮込むだけで完成です」

「おぉ…。二人でやると早いな…」

「じゃ、煮込んでる間に、アイスクリームでも作りましょうか」

…マジで?今なんつった?

「作る…?アイスを?」

「こたつでおでんは定番ですけど、こたつでアイスクリームも定番でしょう?」

「そりゃまぁ…そうだけど」

アイスクリームって、そんな気軽に自宅で作るものだっけ?

スーパーで買ってくれば良いじゃん。バニラアイス一個100円くらいで買えるじゃん。

しかし。

「大丈夫、実は作ったことあるんですよ。以前セカイお姉さんが、『ルーチェスくーん。お姉ちゃんアイス食べたいよー』ってせがんできたことがあって」

それで作ったのか?

分かるよ。たまに、無性にアイス食べたくなる時って、あるよな。

でもそれは多分、「アイス食べたいからコンビニで買ってきて」という意味であって。

自分で作ってくれという意味じゃないと思うぞ。
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