The previous night of the world revolution~F.D.~
「うん、美味しい。出汁の味が芳醇だね。家庭料理の粋を越えてるよ」

「味しみしみですねー。お豆腐が良い味出してます」

「そうだな…」

ルーチェスが入れた豆腐。めっちゃ美味い。

おでんに豆腐…アリだな。

更に。

「…!このロールキャベツ、美味しい…!」

ルーチェスが手ずからひき肉を捏ねて作った、自慢のロールキャベツを。

シュノは一口食べて、顔を輝かせていた。

「ふむ、確かに。生姜が効いてるな」

ルリシヤも絶賛。

「ふふふ。そうでしょう?我が家の味なんです」

今ばかりは、ルーチェスのドヤ顔を咎められない。

俺も食べてみたけど、めっちゃ美味い。

お前、もう『青薔薇連合会』の裏幹部やめても、料理人としてやっていけるのでは?

しかも、ルーチェスが作ったのはおでんだけではないのだ。

「あー食った食った。もー腹いっぱいだー!」

早々におでんを食べたアリューシャが、こたつに入ったまま横になった。

おいコラ。食べてすぐ横になると牛になるぞ。

お行儀が悪い。マフィアがお行儀を気にするのは間違ってるかもしれないが。

「アリューシャさん。デザートがありますよ」

「へっ?」

「こっちも定番かなと思いまして、デザートにバニラアイスを手作りさせてもらいました。食べますか?」

「食べる食べるー!」

アイスクリームに釣られて、喜々としてひょこっと起き上がるアリューシャである。

「皆さんもどうぞ」

ルーチェスは、アイスピックで丸くバニラアイスをくり抜いて、お洒落にミントを添え。

小皿に入れて、プラスチックの小さなスプーンと一緒に配った。

すげぇな…。見た目といい香りといい、お店のアイスクリームみたい…。

「うひょー!美味そー」

「本当にな…。何処ぞのカフェのアイスと違って、黒くないところが素晴らしい…」

「ちょっとルルシーっ?そのカフェって、もしかして俺の店のことじゃないですよね?」 

さぁな。

ちゃんと白いバニラアイス…。なんて美味しそうなんだ。

やっぱりバニラアイスはこうじゃないとな。

黒いのは、チョコアイスと黒ごまアイスだけで良い。

「冷たい…!でも、美味しい…!」

「こたつで食べるアイスクリーム…。最高だな」

シュノもルリシヤも、アイスを食べて大満足である。

俺も早速、一口いただいた。

芳醇なバニラの香りが、口いっぱいに広がる。

うっま…。

「凄いな…。コンビニで買うアイスとは全然違う…」

「ふふふ。皆さんありがとうございます。ルルシーさんが手伝ってくれたんですよ」

いや、俺はルーチェスの指示に従ってただけだから…。

「何だか、こういうのって久し振りだね」

アイズが、バニラアイスを食べながら言った。

…え。

「しばらくルレイアがいなかったし、ルルシーも帝国騎士団に行ってたし…。こうして皆が揃って、皆で美味しいものを食べて…。こういうのって、凄く幸せだよね」

「…アイズ…」

…そんな、改まってしんみりするなよ。

意識してしまうじゃないか。

「…大丈夫だよ。これからは、ずっとこうだから…」

俺も、ルレイアも帰ってきたのだ。

ここが俺達の居場所なのだから…他に何処にも行かない。行くはずがない。

だから、安心して良いのだ…。
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