The previous night of the world revolution~F.D.~
…ところで、電話について気になることが一つ。

「…この電話、プッシュボタンがついてないが…」

「あ…。それはご当主様が、屋敷内の執事やメイドを呼ぶ時に使う電話だそうで…」

と、部下が説明した。

「受話器を取れば、自動的に使用人達のもとに繋がるそうです」

「…成程…」

飲食店で、店員を呼ぶ時の電話みたいなものか。

これではっきりしたな。

アジーナ女史は、使用人達に助けを求めようと、受話器に駆け寄ったんだな。

まぁ、助けが駆け付ける前に…とどめを刺されてしまったようだが。

…状況は大体理解した。

では、一番大切なことを聞こうか。

「…犯人は?目星はついてるのか」

「はい…そのことについてですが…電話を受けたサイネリア家の執事から…証言が」

「電話?間に合ったのか」

「その…死の直前、ご当主が電話口で叫ぶ声を聞いたそうで…」

ほう。

文字通り、断末魔の叫びという奴だろうか。

だが、死ぬ前に誰かに言葉が届いたことを、不幸中の幸いと言うべきか。

「…それで?最後に彼女はなんと言った?」

「…それが…その…」

「どうした?はっきり言ってくれ」

「…分かりました。そのまま申し上げます…。『助けて。ルシファー・ルド・ウィスタリアが、私を殺しに…』です」

…その部下が告げた、アジーナ女史の最後の言葉。

それは、犯人に繋がる大きな…いや、決定的な証拠になり得る情報だった。
< 298 / 522 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop