The previous night of the world revolution~F.D.~
俺達が訪ねてきた時、セルテリシアは丁度、地方にある『ブルーローズ・ユニオン』の支部を視察に行っていたらしいのだが。

本部に俺達が「仲良く」訪ねてきたことを知り。

『ブルーローズ・ユニオン』代表、セルテリシア・リバニーその人が、すぐさま本部に戻ってきた。

「お、お待たせしましたっ…。ルレイアさん、それに…幹部の皆さんも…」

何故か焦ったような表情のセルテリシア。

「いやいや、良いんですよ。ちょっとお喋りしに来ただけなんで。気になさらず」

「…帰ってきたら本部の壁を破壊されてんだから、嫌でも気になるだろ」

ちょっとルルシー。横で何呟いてるんですか。

まるで俺が悪いみたいに言わないでください。

「あっ、そうだ手土産も持ってきたんですよ。良かったらどうぞ」

ルーチェスが、持参した手土産の紙袋をセルテリシアに差し出した。

「あ…え、えぇと、あ、ありがとうございます…?」

何で疑問形なんですか?素直に喜んでくださいよ。

「美味しいですよ、それ。ルレイア師匠の経営する『ブラック・カフェ』の今月の新商品、ブラックロールケーキです」

勿論、生地もクリームも中に入ってるフルーツも、全て真っ黒なスペシャルロールケーキである。

「ぶ、ブラック…?」

「はい。こちらはシェルドニアコウモリの脳みそをすり潰して、生地とクリームにたっぷりと…」

「こっ、コウモリの…脳みそ…!?」
 
セルテリシアさんの顔色が、サッと変わった。

「…俺、そんなに驚くようなこと言いました?」

「い、い、いや…その…」

「…コウモリの脳みそ食べさせられそうになったら、誰でもそうなるだろ」

ルルシー、今何か言いました?

ちょっとよく聞こえませんでしたね。

きっと、「何それ、美味しそう!」って言ってくれたんでしょうね。そうに違いない。

セルテリシアの横に立ってる側近のエペルとミミニアも、物凄い行相してるし。

「是非、皆さんで一緒に食べてくださいね」

「ひ、ひぇっ…」

俺がこんなにも、にこやかに微笑んでいるというのに。

何でそんな怯えた表情なんですかね。

きっと気の所為ですね。うん、そうに違いない。

「そ、それよりも…」

それよりもって何ですか?

「その…今日は一体、どういった用件で…」

「あぁそうだ。忘れるところでした。全くしらばっくれてんじゃないですよ。誤魔化そうとしてもそうは行きませんからね」

「別にしらばっくれてはないだろ」

ちょっとルルシー。マジレスやめてください。

「これは真面目な話なんですよ?」

「どの口で言ってんだ。まず、お前が真面目になれ」

失礼な。俺はいつだって真面目一筋に生きてますよ。ねぇ?

ルティス帝国広しと言えども、俺ほど真面目な人間はいませんよ。

礼儀正しいですしね。いつでも。
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