The previous night of the world revolution~F.D.~
私が呆然としていると、ルシェ卿は更に続けて言った。
「殺されたアジーナ・ミシュル・サイネリアは、元帝国騎士官学校の理事長で…。だからルレイアには、被害者を殺害する動機がある」
「…」
「おまけに…殺される直前に、被害者は『ルシファー・ルド・ウィスタリアに殺される』と自供して、その音声が録音されているんだ」
「…」
「それに加えて、現場からルレイアの頭髪と指紋が見つかって…。とうとう、ルレイアが容疑者ということに…」
「…」
…信じられない。
私が無言でいる間も、ルシェ卿は必要な情報を話し続けた。
「今朝、ルレイアとルルシーを重要参考人として、事情聴取をした。ルレイアもルルシーも、やってないと言った。自分達は無実だと」
「…」
「私もそう思う。いくら動機があるからって…ルレイアがそんなこと…するはずがない」
…そう。
それなのに、現場からはルレイア卿が犯人だと証明する証拠が、いくつも見つかったのね。
「何者かが、ルレイアを犯人に仕立て上げる為に仕組んだことに違いない」
「…」
「真犯人は別にいるんだ。でも、このままじゃルレイアが犯人にされてしまう。そんなことは認められない。絶対に…。…これが自分の職務に反することだと分かっている。でも、私は…あの子を救いたい。今度こそ、あの子を助けたいんだ」
かつて、ルレイア卿がローゼリア元女王の暗殺未遂事件の犯人にされてしまった時。
ルシェ卿は、弟であるルレイア卿を信じることが出来なかった。
その時のことを、ルシェ卿は今でも、深く後悔している。
だからこそ、今度こそ。今度こそ彼女は…自分の弟を信じ、そして助けようとしていた。
自分の正義に従って。
「…それで、私に何を頼みたいの?」
矢継ぎ早に説明してくれたお陰で、大体の事情は分かった。
その上で、君は何をしにここに来たの?
私に何か、頼み事があって来たんだよね?
「ルレイアを助けて欲しい。どうか…帝国自警団で、匿って…守ってやって欲しいんだ」
ルシェ卿は、真に迫った瞳で私にそう頼んだ。
…成程、そういうこと。
確かに、それは私にしか頼めないね。
「頼む…。礼なら何でもする。ウィスタリア家の財産を、全て譲渡しても構わない」
「やめて。私は財産が欲しい訳じゃない」
お金じゃ動かないよ。私は。
いくら積まれたって、駄目なものは駄目。
「それより、君、自分が何言ってるか分かってるの?このことが帝国騎士団にバレたら…」
正式に容疑者として認定された人を、匿ってくれと頼むなんて。
そんなこと、帝国騎士団にバレたら、自分の身が危うくなる。
それくらい、ルシェ卿だって分かってるはず…。
「…どうでも良い、そんなことは」
ルシェ卿は、僅かに首を振って答えた。
「私はかつて、あの子を救えなかった。今度こそ救ってみせると誓ったんだ。…その為に、私の身がどうなろうと構わない」
きっぱりと。何の後悔も躊躇いもなく。
何もかも全部覚悟して、彼女がここに来たのだと分かった。
「殺されたアジーナ・ミシュル・サイネリアは、元帝国騎士官学校の理事長で…。だからルレイアには、被害者を殺害する動機がある」
「…」
「おまけに…殺される直前に、被害者は『ルシファー・ルド・ウィスタリアに殺される』と自供して、その音声が録音されているんだ」
「…」
「それに加えて、現場からルレイアの頭髪と指紋が見つかって…。とうとう、ルレイアが容疑者ということに…」
「…」
…信じられない。
私が無言でいる間も、ルシェ卿は必要な情報を話し続けた。
「今朝、ルレイアとルルシーを重要参考人として、事情聴取をした。ルレイアもルルシーも、やってないと言った。自分達は無実だと」
「…」
「私もそう思う。いくら動機があるからって…ルレイアがそんなこと…するはずがない」
…そう。
それなのに、現場からはルレイア卿が犯人だと証明する証拠が、いくつも見つかったのね。
「何者かが、ルレイアを犯人に仕立て上げる為に仕組んだことに違いない」
「…」
「真犯人は別にいるんだ。でも、このままじゃルレイアが犯人にされてしまう。そんなことは認められない。絶対に…。…これが自分の職務に反することだと分かっている。でも、私は…あの子を救いたい。今度こそ、あの子を助けたいんだ」
かつて、ルレイア卿がローゼリア元女王の暗殺未遂事件の犯人にされてしまった時。
ルシェ卿は、弟であるルレイア卿を信じることが出来なかった。
その時のことを、ルシェ卿は今でも、深く後悔している。
だからこそ、今度こそ。今度こそ彼女は…自分の弟を信じ、そして助けようとしていた。
自分の正義に従って。
「…それで、私に何を頼みたいの?」
矢継ぎ早に説明してくれたお陰で、大体の事情は分かった。
その上で、君は何をしにここに来たの?
私に何か、頼み事があって来たんだよね?
「ルレイアを助けて欲しい。どうか…帝国自警団で、匿って…守ってやって欲しいんだ」
ルシェ卿は、真に迫った瞳で私にそう頼んだ。
…成程、そういうこと。
確かに、それは私にしか頼めないね。
「頼む…。礼なら何でもする。ウィスタリア家の財産を、全て譲渡しても構わない」
「やめて。私は財産が欲しい訳じゃない」
お金じゃ動かないよ。私は。
いくら積まれたって、駄目なものは駄目。
「それより、君、自分が何言ってるか分かってるの?このことが帝国騎士団にバレたら…」
正式に容疑者として認定された人を、匿ってくれと頼むなんて。
そんなこと、帝国騎士団にバレたら、自分の身が危うくなる。
それくらい、ルシェ卿だって分かってるはず…。
「…どうでも良い、そんなことは」
ルシェ卿は、僅かに首を振って答えた。
「私はかつて、あの子を救えなかった。今度こそ救ってみせると誓ったんだ。…その為に、私の身がどうなろうと構わない」
きっぱりと。何の後悔も躊躇いもなく。
何もかも全部覚悟して、彼女がここに来たのだと分かった。