The previous night of the world revolution~F.D.~
だがルルシーは、捕まると聞いて途端に不安になってきたようで。

「じゃあ…やっぱり…ブロテの誘いなんか無視して、国外に逃げるべきだったんじゃ…。…って、今更言っても仕方ないけど…」

本当に仕方ないですね。

選択の時はもう過ぎたんだから、今はもう、どんな状況に陥っても最善を選ぶことだけ考えましょう。

「どうでしょうね。…俺達が『青薔薇連合会』から出ていってすぐ、参考人から容疑者になったようですし…」

「…それは…」

あのままバスを乗り継いで、国境まで…なんてやってたら、間に合わなかった可能性は充分ある。

ブロテの誘いを断って国境に逃げたとして、無事に逃げ切れる保証はなかった。

だからせめて、当座の安全が保証される帝国自警団を選んだのだ。

苦肉の選択ですね。俺にとっても。

でも、特に心配はしていない。

「…綱渡りだな…。俺達…」

本当。そんな感じですね。

「大丈夫ですよ、ルルシー。そんなに心配しなくても」

「お前はまた、何でそう言い切れるんだよ…」

「もし捕まったとしても、咎を受けるのは俺だけですよ。いざとなったら、ルルシーは俺が脅して無理矢理連れ回してた、ってことにしますから」

「…!」

元々、容疑者になってるのは俺だけなんだし。

いざって時は、ルルシーだけは無罪になるようにしますよ。

「だからルルシーは大丈夫です。そんな心配しな、」

「…ふざけんなよ。お前」

「えっ」

ルルシーは、俺の胸ぐらを掴まんばかりに怒っていた。

ちょ、どうしたんですかいきなり。

紅茶でリラックスしてるはずが…。

「そんなことさせると思ってるのか。もし捕まったら、逆に、俺がお前を脅してサイネリア家の当主を殺させたって証言するからな」

「えぇぇぇ…。信じてもらえませんよ、さすがに…」

「うるせぇ。お前だけを有罪にしてたまるか。お前が刑務所に入るなら、俺も一緒に入る」

まさかの。刑務所一緒に入る宣言。

同じ高校に行こうね、と言い合う友達はいても。

同じ刑務所に入ろうね、と言い合う人はなかなかいないんじゃないでしょうか。

「ルルシーったら…自分が何言ってるのか分かってるんですか…?」

「お前こそ。俺の覚悟を見誤るなよ」

…全くですね。

「だから、絶対一人で違うところに行こうとするな。何処に行っても良いけど、一人では行くな。俺も一緒に連れていけ」

「ルルシー…」

「お前となら、俺は何処だって一緒に行ってやるから」

…ルルシーはいつも、そう言ってくれますね。

親も家族も仲間も、自分自身でさえも自分を見捨てても。

ルルシーだけは、決して俺を見捨てない。

…だから俺は、ルルシーが大好きなんですよ。

「…分かりました。約束します」

「よし、それで良い」

地獄に行くにせよ、奈落の底に行くにせよ。

ルルシーと一緒なら怖くないですね。

今は少しでも、希望を持ちましょう。
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