The previous night of the world revolution~F.D.~
ーーーーー…同時刻。

帝国騎士団隊舎では、緊急隊長会議が開かれていた。

「ルレイア・ティシェリーを捕まえられなかっただと…?どういうことだ!?」

「ど…どういうことと言われましても…。言葉通りの意味です。俺が『青薔薇連合会』本部に行った時には、既にルレイア殿はいなくなっていて…」

「それで貴様、手ぶらでのこのこ帰ってきたのか!?」

「ほ、他にどうしようも…」

…早速騒然とした会議である。

唾を飛ばしているのは、五番隊隊長のアストラエア。

そのアストラエアに怒鳴られているのは、四番隊隊長のルーシッドである。

…親子ほど歳も違う相手に、よくもまぁそれほど怒鳴りつけられるもんだ。

大人気ないにも程がある。

さすがにルーシッドが気の毒になってきた。

仕方ない。怒り心頭のアストラエアを敵に回したくはないが。

これ以上、目の前でパワハラを見せられるのは御免被りたい。

「…やめろよ。ルーシッドを怒鳴っても仕方ないだろ」

俺は、横から口を挟んでアストラエアを制止した。

何もルーシッドが悪い訳じゃない。

「別にお前が取り逃がした訳でもないんだろ?ルーシッド」

「…はい。彼が正式に容疑者として認定されてすぐ、『青薔薇連合会』にルレイア殿の身柄を確保しに行ったのですが…。既にもぬけの殻でした」

…と、俯きながらルーシッドが答えた。

ふーん。ま、仕方ないわな…。

それを聞いたオルタンスが一言。

「…逃げたな」

…ま、逃げたんだろうな。

そりゃそうだろ。

「昨日、重要参考人として事情聴取してすぐ…だろうな」

「あぁ。そうだろうな」

このまま容疑者にされるのは時間の問題と見て、すぐ脱走したのだろう。

「ちっ…。だから、重要参考人などと悠長なことをせず、すぐに容疑者として捕まえるべきだったんだ」

「みすみす取り逃がして。一体どうするつもりだ?」

ルレイアが大嫌いなアストラエアと、九番隊隊長ユリギウスが言った。

お前らは相変わらず、ルレイアを責める時だけは意気投合してんな。

「今更過ぎたことを言っても、どうにもならないだろ」

諦めろよ。ルレイアはもう逃げたんだよ。

「殺人事件の容疑者を、みすみす取り逃がす訳にはいかない。すぐに捜索すべきだ」

と、十番隊のアシタリカが言った。

「捜索って言ってもな…」

…ぶっちゃけ、砂漠のど真ん中でオアシスを探す方が、よっぽど希望が持てると思うぞ。

あいつが本気で逃げたら、多分捕まえられる奴は、この国にはいないだろう。

果たして、何処に逃げたのやら…。

考えられる選択肢は、色々あるが…。

「『青薔薇連合会』の隠れ家か…。それとも『青薔薇連合会』系列組織の所有地か…」

「国外じゃないか?」

…俺もそう思う。

あいつはもう、多分、今頃国内にはいないだろうな。

「だったら、今すぐ国境を封鎖して、国外逃亡を防ぐべきだ」

「もう遅いだろ。今頃とっくにバカンスに旅立ってるさ」

そして、「間抜けな帝国騎士共めw」と笑っている頃だろうよ。

…そう思うと、なんかムカつくな。
< 353 / 522 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop