The previous night of the world revolution~F.D.~
…それから、およそ二時間後。

事情を説明してもらう為に、帝国自警団団長のブロテ・ルリシアスを迎えにやらせた。

空気がピリピリとした会議室にやって来た彼女は、何事もないようにけろっとした。

大した胆力だ。…腹据わってんな。

さすが帝国自警団団長、と言ったところか。

「よく来てくれたな、ブロテ団長。一体いつ振りか」

「そうね。…あの時はその…未だに、ちょっと恥ずかしいと思ってるよ」

…盛大な勘違いをしてたもんな。

帝国騎士団が、ルレイアの尻に敷かれてるって…。

「…それで、今日はどうしたの?わざわざ私を呼びに来るなんて。私、今忙しいところだったんだけど」

あまりにも、悪びれないしれっとした態度に。

さっきまでも充分苛ついていたアストラエアの怒りが、再燃。

「しらばっくれるつもりか、貴様…」

「何が?」

小娘相手に、大人気ない奴だよ。

「ルレイアのことだよ。帝国自警団で保護してると聞いた」

アストラエアに代わって、俺が質問することにした。

「あぁ、それ…」

「一体どういうことだ?ルレイアに殺人容疑がかかってること、あんたも知ってるんだろ」

「勿論知ってる」

「誰から聞いた?」

「帝国自警団の情報網を舐めないで欲しいね。私達にも独自の情報ルートがある」

ブロテは、決してルシェから聞いたとはいわなかった。

…成程ね。じゃ、まぁそういうことにしておいてやるよ。

重要なのは、誰から聞いたか、ではない。

「それなら、何故殺人犯を保護している?即刻こちらに引き渡してもらおう」

と、七番隊隊長のフレイソナが言った。

しかし。

「それは出来ない」

きっぱりと断るブロテ。

「何を馬鹿なことを…」

「馬鹿なことをしようとしてるのは、そっちだよ。帝国騎士団は、またルレイア卿に無実の罪を押し付けるつもり?」

「…」

…そりゃまた、痛いところを突いてきたな。

「全然学習してないみたいだね。以前、ルレイア卿にローゼリア元女王の暗殺未遂事件の冤罪を押し付けて、後で痛い目を見たのを忘れたんだ」

言い返す言葉をなくした一同だったが。

唯一、全くこの場で狼狽えていない男が口を開いた。

それが誰かと言うと…勿論、我らが帝国騎士団長のオルタンスである。

「貴殿は、ルレイアが犯人だと疑ってないのか?」

「えぇ、勿論。ルレイア卿がこんな、すぐにバレる事件を起こすはずがない。これはルレイア卿を陥れる為に、他の誰かが仕組んだ罠なんだ」

ブロテも、俺やオルタンスと同じ意見なようだ。

…ま、ルレイアをよく知っている人物なら…誰でもそう答えるよな。

「そう思わせるのが奴の目的で、貴様も言葉巧みに、あの男に騙されているんじゃないのか」

ユリギウスが、ブロテを睨む。

しかし、ブロテは全く怯まない。

「ルレイア卿が私に『保護してくれ』って頼んできた訳じゃない。これは私の判断だよ」

あくまで、毅然とした態度を貫き続けた。

小娘にしては、なかなかあっぱれだ。
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