The previous night of the world revolution~F.D.~
「ルレイア卿自身も、無実を訴えてる。彼の仲間から、ルレイア卿にらアリバイもあるって聞いたよ」

「そんな戯言を信じているのか?マフィアの言うことなど、信用に値しない」

「…!そんな言い方はないでしょう」

ブロテが、初めて目の色を変えた。

「例えどんな身分だろうと出自だろうと、彼らがルティス帝国の国籍を持つ限り、彼らは尊重されるべきルティス帝国の民なのだから」

どうやら、これがブロテの帝国自警団団長としての矜持であるようだ。

生まれによって差別意識がないのは、いかにも平民出身のブロテらしいな。

「私は無実を訴える一人の国民の声に、耳を貸したに過ぎない」

「ちっ…。話の分からない女が…。自分が何をしているか分かっているのか?殺人犯のマフィアの幹部を庇うなど」

「何度も言わせないで。私は無実を訴える国民を守っているだけ。君達だって、本当はルレイア卿が無実だって分かってるんでしょ?」

…それは。

少なくとも、ここにいる隊長達のうち何人かは、ルレイアを無実だと確信している。

「あぁ。俺はルレイアが無実だと思ってる」

オルタンスははっきりと答えた。

「それなら、どうして…」

「感情論以外で、ルレイアが無実だと証明する術がないからだ。殺害現場から見つかった証拠はどれも、ルレイアを犯人だと裏付けるものばかりでな」

「…」

「どうしても、ルレイアを疑わない訳にはいかないんだ。…帝国騎士団長として」

「…そう。自分の信じる正義すら曲げなきゃいけないなんて、やっぱり私は帝国騎士団じゃなくて良かった」

それは皮肉か。

俺だってな…。好きで、ルレイアを有罪にしようとしてる訳じゃ…。

「とにかく、私は自分を意見を曲げるつもりはない。ルレイア卿が身の潔白を訴える限り、私は帝国自警団でルレイア卿の身を保護し続ける」

はっきりと、きっぱりと、ブロテはそう言い切った。

…良いもんだな、帝国自警団は。俺達みたいなしがらみがなくて。

…。

オルタンスがルレイアに、ローゼリア元女王暗殺未遂事件の冤罪を押し付けた時。

あの時ブロテがルティス帝国国内にいたら、ルレイアは今頃、『青薔薇連合会』にはいなかったかもしれないな。

代わりに、帝国自警団幹部のルレイア・ティシェリーが爆誕していたかもしれない。

果たして、どちらの方がルレイアにとって幸いだったのか。

「…そうか、良かった。帝国自警団で保護してもらえるなら安心だ」

オルタンスは、帝国騎士団団長としてあるまじき台詞を、小さな声で呟いた。

「分かった。いずれにしても、帝国自警団権限で保護しているのだから、俺達には手出しが出来ない。しばらくの間も、ルレイアを頼む」

「早いところ、真犯人を見つけて。君に正義の心があるなら」

「…努力しよう」

オルタンスに向かって、「正義の心」とやらを説くとは。

さすが帝国自警団団長。と言ったところか。

真犯人…ねぇ。

ルレイア自身でさえ検討がついていないのに、果たして俺達で見つけられるものなのだろうか?
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