The previous night of the world revolution~F.D.~
「本気で疑っちゃいませんよ。鎌を掛けただけです」

「えっ…」 

分かってましたよ。セルテリシアに、そんなことする度胸はないってことくらい。

でも、万が一ってこともあるだろう?

だから、敢えて疑いをかけて、セルテリシアの反応を観察させてもらった。

案の定、セルテリシアはシロだったようですね。

「か、鎌を…そ、そうですか…」

「…っ…」

セルテリシアはぽかんとしていたが、騙されていたと分かったエペルとミミニアは、何か言いたそうな顔だった。

ふっ、残念でしたね。

これがマフィアの…俺のやり口ですよ。

…それに。

「誤解しないでください。俺だって、理由もないのにあなた方を疑ってる訳じゃないんですよ」

「ど…どういうことですか?」

「そのダイヤ、カミーリア家から盗み出されたものらしいんですけど」

「盗み出された…!?」

驚きのあまり、目を見開くセルテリシア。

演技で出来る顔じゃない。本気で驚いている顔だ。

ってことはやはり、セルテリシアさんはシロなんですね。

「『ローズ・ブルーダイヤ』を盗むなんて…!一体、誰がそのようなことを…」

「あなたですよ、セルテリシアさん」

「…え?」

間抜けな顔をありがとうございます。

「『ブルーローズ・ユニオン』の構成員が、カミーリア家の宝物庫に侵入して、このダイヤを盗み出してきたそうです」

「…!?」

「果たして何がしたかったのか。単に金が目的なのか、それとも『青薔薇連合会』…アシュトーリアさんを陥れたかったのか…」

「ま…待ってください…!」

待ちませんよ。

「『ブルーローズ・ユニオン』の犯行。ってことは、あなたが部下に指示してやらせたんじゃないかと思って、こうして確かめに来たと…」

「待ってください…!私はそんなこと指示していません!」

そうですか。でしょうね。

そんな青ざめて叫ばなくても分かってますよ。あなたの指示じゃないことは。

でも、だからって「私が指示したんじゃないから無関係です」とは言わせませんよ。

「指示してようとなかろうと、あなたの部下の犯行だってことは間違いないんですよ」

「そんなこと…!一体誰から聞いたんですか?その方が間違っているんです」

ジュリスさんのことですか?

彼は嘘をつかない。ただ、彼のもとに『ローズ・ブルーダイヤ』を持ってきた『ブルーローズ・ユニオン』の構成員…とやらが嘘をついている可能性はある。

…とはいえ。

「この際、誰が犯人かどうかは問題じゃないんです」

「…え…?」

「『ローズ・ブルーダイヤ』だと思われる宝石が、今俺達の手元にある。これが問題なんです」

「…」

あなたも気づいたようですね。セルテリシアさん。

事の重大さというものが。
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