The previous night of the world revolution~F.D.~
…と、思ったのも束の間。

ルルシーの殺し文句のお陰か、俺はその夜、最高の夢を見ていた。

夢の中にルルシーが出てきて、言うことには。

「実はずっと隠してたけど、俺もゴスロリに目覚めたんだ。ルレイアとお揃いの格好がしたい」と頼んできて。

夢の中の俺は、そりゃもう喜々として、お気に入りの衣装をルルシーとお揃いで作って、一緒に着ていた。

最高に良い気分で、このまま朝まで夢の中でルルシーと双子コーデを楽しんでいたかったのだが…。

「…ん…?」

僅かな物音を感知して、俺は眠りから目を覚ました。

…しまった。起きちゃいましたよ。

今、めっちゃ良い夢見てたのに…。

出来れば正夢になって欲しいレベルの…。

俺を起こしたさっきの物音は何だ、とベッドに横たわったまま、物音のした方に僅かに首を動かすと。

「…!」

俺はそれを見て、ベッドの中で息を潜めた。

隣のベッドに寝ていたはずのルルシーが、こっそりと起き出していた。

そして、抜き足差し足で、そうっとベッドから降りていた。

どうやら俺を起こさないように、物音を立てないよう気を遣ってくれているようだが。

済みません。俺起きちゃいました。

…こんな夜中に、一体どうしたんでしょう?

普通に起き上がって「どうしたんですか?」と聞いても良かったんですけど。

何となく、こう、悪戯心と言いますか。

親が寝た後、こっそりベッドの中にゲーム機を持ち込んで、布団を被ってプレイするような。

そんな密かな高揚感を押し隠し、そっと布団の中から観察した。

もしかしてアレですかね?やっぱりアレなんですかね?

え?アレって何なのかって?

そりゃあ…アレですよ。

男の子が夜に一人でやること…って言ったら、一つしかないでしょう?

ルルシーの密かな楽しみを邪魔するような、そんな無粋な真似はしたくないですが。

もしそうなら、是非とも俺も加えていただきたいですね。

ほら、一人でやるのは良くないですよ。俺はプロですから。ほら、ね?

…最高に良い気持ちにさせてあげますよ?

ドキドキしながら、こっそり見守っていると。

ルルシーは、テーブルに向かい合ってソファに座り。

スマホのライトを照らして、何やら引き出しから取り出した本を開いた。

はい来た。これは確定ですよ。

え?何が確定なのかって?

男の子が夜にこっそり開く本って言ったら…ねぇ?

昨日、ブロテに届けさせたあの本。

料理本だけかと思ってましたけど、やっぱり違ってたんですね。

やけに俺に隠すなぁと思ってたら…そういうことだったんだ。

もう、ルルシーったら…正直に言ってくれたら良いのに。

俺は非常に寛容な人間なので、恋人のエロ本くらいは許容しますよ。

ほら、ルーチェス夫妻は、お互いのえっちな本を交換して読んでるって言ってたし。

楽しそうですよね。恋人とエロ本の貸し借り。

ルルシーがどんなエロ本に興奮するのか、そのジャンルを見せて欲しかった。

ここからでは遠くて、ルルシーの手元までは見えない。

…こうなったら、こっそり背後から近寄るしかなさそうですね。

諦めるという選択肢は、今の俺には思いもよらなかった。

諦めるなんて勿体ないじゃないですか。後ろから押し倒すには絶好のチャンスですよ、これは。
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