The previous night of the world revolution~F.D.~
俺は、物音を立てないようにそーっとベッドから降りた。

ルルシーよりは上手に、物音を立てないことに成功したようですよ。

それでも多少の衣擦れの音はしたはずだが、どうやらルルシーは全く気づかないほどに熱中しているようで。

「…」

スマホの明かりで手元を見ながら、熱心にカリカリと鉛筆を動かしていた。

…ん?鉛筆…?

えっっな本を読んでるとばかり思ってたんですけど?

まぁ、背後から抱き締めてみれば分かる。

抜き足差し足忍び足で、そーっとルルシーの背後に迫り…。

「ルルシー…捕まえたっ!」

「はぁぁっ!?」

その背中を、ぎゅっと抱き締めた。

完全に不意打ちだったらしく、びくっ、と良い反応をするルルシーである。

にゅふふ。素敵な反応。

俺の予定では、このまま押し倒して事を始める…つもりだったのだが。

「な、何なんだよルレイア…!?いつから起きてた!?」

「え?いや…ルルシーがベッドからこそこそ起き上がってる音が聞こえたので…」

目が覚めちゃったんですよ。

結構良い夢見てたんですけどね。

「あ、そ…そうなのか。起こしてごめん…」

「それは良いんですけど…ルルシー、さっきから何やってるんです?」

ルルシーは何も、えっっな本をこっそり読んでいるのではなかった。

いえ、本は読んでたんですけど。

ルルシーの手元には、一冊の大学ノート。

と、何やら分厚い、細かい字がびっしり書かれた、難しそ〜な本。

「ルルシーの性癖をチェックするつもりだったのに…。…何ですか?この本」

「いや、あの、これは…」

ルルシー、しどろもどろ。

…そんな隠すような本ですか?わざわざ夜中に、俺が寝た隙を狙って…。

「な、何でもないんだよ…。気にせず寝てくれ」

そう言われても、隠されたら余計気になるじゃないですか。

それにその本、何だか見たことがあるような…?

俺の視線が、その本に向けられていることに気づいたのか。

ルルシーはさっと本を抱き上げ、表紙を隠した。

「べ、別に…本当に何でもないって」

「もしかして…ルルシーの特殊性癖…?」

「…そういうことじゃないからな。一応言っとくけど」

「だったら、隠さずに見せてくださいよ」

じゃないとルルシーの特殊性癖を疑いますよ。

ルルシーはアレですか。えっっな本はコミックじゃなくて、小説派ですか。

そういう層も一定数いる。

どうやら見せてくれないようですね…。ふむ、どうしたものか…。

…こういう時は。

俺は、突然しゅばっとルルシーの背後を指差した。

「…っ!ルルシー、あれは何ですか?」

「えっ?」

「隙ありっ!」

「あぁっ!?」

超素直なルルシーが、俺に釣られて後ろを向いた瞬間。

ルルシーが抱き締めている本を、スッと引ったくった。

はい、俺の勝ち。

ルルシーが素直な良い子で、俺はとても嬉しいです。
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