The previous night of the world revolution~F.D.~
「くそっ…!何の音沙汰もないと思ってたら…まさかこの帝国自警団で保護していたとはな!」

ブロテ団長が、皆を集めて事情の説明をした後。

私と私の理解者達は、状況を整理する為に三人で集まっていた。

…私の理解者の一人は、露骨に怒りを顕にしていた。

…当然のことだ。

「あの男を容疑者に仕立て上げるのに、どれほど苦労したと思ってるんだ?これじゃ苦労が水の泡だ…!」

その通りである。

ルレイア・ティシェリー…。あの男に殺人の容疑を掛け、殺人犯として逮捕されるよう仕向けたのは、この私達なのだ。

その為に、大変な苦労をした。

どうすればあの男を陥れられるか。どうすればあの男に復讐出来るかを、ずっと考え続け…。

多大な時間と労力と金を払って、ようやくあの男を容疑者に仕立て上げたのに。

まさか、ブロテ団長に邪魔されるとは。

味方に背中を撃たれたような気分だ。

…が、こうなることは予測出来た。

ブロテ団長は決して、私達の味方ではない。

むしろ彼女は、あの男の味方だと言っても過言ではなかった。

案の定、彼女はあの男に殺人容疑がかかるなり、こうして帝国自警団で保護している。

「…知らなかったこととはいえ、まさかあの男と一つ屋根の下で生活していたなんてね」

あの男は、あの時あの会議室の中にいたのだろう。

恥知らずにも。帝国自警団に保護されて。

私達の仇が、こんなに近くにいたなんて。

そうと知っていれば、喉元を掻き切ってやったものを。

…それが出来れば、の話だが。

「こんな皮肉があるか…?殺人犯を保護するなんて…まさかブロテ団長がここまで愚かだったとは」

「…」

気持ちは分かる。私だって、心の底から憤っている。

絶対に許せない。あの男のことも、あの男に味方しようとする者のことも。

「…これから、どうする?」

私は、私の理解者達にそう尋ねた。

「…何とかならないの?今、あの男は殺人犯でしょ。いくら帝国自警団と言えども…」

「…無理だよ。少なくとも、ブロテ団長が考えを改めない限りは無理だ」

と、もう一人の理解者が答えた。

彼は力なく首を横に振った。

…そんな…。

「自警団権限で保護しているなら、帝国騎士団と言えど手出しは出来ない。ブロテ団長が『保護を解除する』と宣言しない限りは…」

「…つまり、ブロテ団長を説得するしかないってこと?」

「…そうなるね。でも、彼女が説得に応じるかどうか…」

「…」

残念ながら、その可能性はほとんど期待出来ない。

ブロテ団長は、あの男が冤罪であることを確信していた。

「無実を訴えるルティス帝国市民を、帝国騎士団に売り渡すような真似はしない」と、きっぱりそう言った。

彼女の頑固さは、帝国自警団の誰もが知るところだ。

…きっと、あの男がブロテ団長を上手く丸め込んだのだろう。

お得意の舌先三寸で。

つくづく腹立たしい男だ。…大人しく逮捕されれば良いものを。
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