The previous night of the world revolution~F.D.~
…そうだね。

何の為にこんな大それたタレコミをしたのか…。色々と想像はつくけど。

「あ、済みません…。その、勝手に口を挟んで…」

ルヴィアは、申し訳なさそうに謝ってきた。

「良いんだよ。今の君は、ルルシーの代理だからね…。気になることがあったら、何でも聞いてくれて良い」

「は、はい…」

「それで…何の為にタレコミをしたか、だったね」

確かなことは言えない。でも、憶測は出来る。

「仮に、タレコミをした帝国自警団員をXとして、このXが新聞社に情報提供をした理由は…まず、己の正義心、かな」

「…正義心?」

ほら、帝国自警団は、正義の心を重んじる組織だ、って話でしょう?

だから、殺人事件の容疑者であるルレイアを、あろうことか帝国自警団の団長が庇っている。
 
それは正義に反したことであり、いくら団長であるブロテの判断でも、納得が出来ない。

罪は公平に裁かれるべきだという、帝国自警団員としての正義心から、新聞社にタレコミをした。

この情報が新聞になり、大衆の知るところとなれば。

国民達は、容疑者を庇うブロテを批判し、即刻保護を解除して容疑者を帝国騎士団に引き渡せ、と声を上げるだろう。

世間の批判に晒されれば、いくらブロテと言えども、立場が危うくなる。

批判を回避する為には、ルレイアを引き渡さずにはいられなくなってしまうだろう。

「正義心…ですか…」

「帝国自警団の団員なら、そう考える者がいてもおかしくない…けど」

「…けど?」

「私の個人的な推測としては、Xの目的は恐らく、正義心の為じゃない。ブロテ団長を追い詰めて、ルレイアの保護を解除させたいんだと思う」

その為に、わざわざ新聞社に情報提供し。

こうして、帝国自警団を批判する記事を書かせたんじゃないかな。

ブロテ団長を追い詰め、嫌でもルレイアを解放せざるを得ないようにする為に。

「…!そんな…まさか…それじゃあ…」

ルヴィアも気づいたようだね。

「恐らく、私達が追っている真犯人は、帝国自警団にいるんだろうね」

そう考えるのが、一番しっくり来る。

犯人Xは、ルレイアを陥れる為にサイネリア家当主殺害事件を起こした。

Xの思惑通り、現場に残された証拠から、ルレイアが容疑者に挙げられた。

このまま逮捕されると思いきや、そこに帝国自警団団長のブロテが邪魔をした。

あろうことか、ルレイアを帝国自警団で保護したのだ。

それを知ったXは、ブロテ団長のことを各新聞社にリークすることで、ブロテ団長を吊し上げた。

そうすれば、世間の批判に晒されたブロテ団長が、ルレイアの保護を解除せざるを得なくなるだろうと考えて。

帝国自警団から見放されれば、最早ルレイアを守るものはなくなってしまう。

今度こそ、逮捕に追い込むことが出来る…。

…というのが、犯人Xの書いたシナリオではないか、と私は推測しているのである。

これはあくまで推論であり、何か証拠がある訳ではない。

ただ、タレコミのタイミングといい、この新聞記事といい…辻褄は合っている。

これまで、ずっとルレイアを陥れようとした犯人について、色々と調べてきた。

全く尻尾を出してくれなくて、非常に難航していたところだったが。

どうやら犯人も、なりふり構っていられなかったようだ。
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