The previous night of the world revolution~F.D.~
それはともかく。

「ほらほら、ルルシー。ブロテから手を離して」

「…ちっ…」

ルルシーは腹立ち紛れに、ブロテの胸ぐらを掴む手を離した。

そうそう。それで良いんです。

「…ルレイア卿」

ようやくルルシーから解放されたブロテは、しょんぼりとして俺に向き直った。

「はい?」

「…本当に、ごめんなさい…。私の考えが足りなかった。皆にも…信じてもらえると思ってたんだ。ルレイア卿を保護したのは正しいことだって…」

「あ、そうですか」

甘ちゃんな考え方だと思いますよ。

その浅慮が、浅はかさが、この事態を引き起こしたのだ。

自分が信じていることを、他人も同じように信じてもらえると思い込むなんて。

全くおめでたい人ですよ。

これが帝国自警団の団長だって言うんだから、やっぱりネットで散々批判されていたように、自警団は解散した方がマシなのでは?

と、皮肉の一つ二つくらい言ってやりたかったが。

…言ったってどうにもならないんですよね。今更。

「起きてしまったことはもう、どうしようもありませんよ。今すべきことは、これからどうするのが最善かを話し合うことでは?」

「それは…そうなのかもしれないけど…」

「ほらほらルルシー、そんなに怒らないで。男前が台無しですよ」

まぁ、怒ってる顔も格好良いですけどね。

すると、ルルシーはようやく少し冷静になったようだった。

「…どうです?落ち着きました?」

「あぁ…。冷静になれとか、話し合おうとか、珍しくルレイアが真っ当なこと言うから、逆に俺も冷静になったよ…」

ちょっと。それどういう意味ですか。

俺はいつだって冷静沈着なルレイアでしょう?

「その…ブロテも、済まん。つい…頭に血が登って…」

「あ、ううん…。私が迂闊だっただけだから…。謝らなきゃいけないのは、私の方だよ。…迷惑かけてしまって、本当にごめんなさい」

と、ブロテはしおらしく謝った。

…まぁ、謝って済む問題じゃありませんけどね。

「…それで?新聞社にタレコミした裏切り者の目処はついてるんですか?」

「…!裏切り者なんて…。誰が新聞社に情報提供をしたのかは、私にも分からないよ」

でしょうね。

「でも、どうかお願い。密告者を、裏切り者なんて言わないで。きっとその人も、良かれと思ってそうしたんだよ。自分の正義に従っただけなんだ」

自分が世間の批判に晒されているにも関わらず、密告した部下を庇うブロテ。

本当甘ちゃんですよ。

「お願いだから責めないであげて。…私は、自分の組織の中で仲間を疑いたくないんだ」

「…あ、そう」

これが『青薔薇連合会』だったら、裏切り者には死の粛清が当たり前ですけど。

帝国自警団では違うんですね。ふーん。

ま、こうなった以上、今更犯人探ししたって仕方ないですけど。
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