The previous night of the world revolution~F.D.~
「シェルドニア王国だと…!?」
因縁深き国の名前を聞いて、眉を吊り上げるルルシー。
「ルティス帝国から週に一回出る輸出船なの。船長に話をつけて、こっそり乗せてもらうことが出来るわ」
正義の帝国自警団長が、密航について堂々と喋っているとは。
これはたまげた光景ですね。
でも、御本人はあくまで大真面目。
「偽のパスポートを何とか用意したから、シェルドニア王国に着いたらそれを見せて、シェルドニア王国の女王に…」
「パスポートなら持ってますよ。『青薔薇連合会』で使ってる偽造パスポートです」
「分かった。ならそれを使って入国して。その後はシェルドニア王国のアシミム女王に、このお手紙を渡しに行って」
と、ブロテは帝国自警団ブロテ・ルリシアスの直筆の署名が入った封筒を手渡してきた。
「アシミム女王に、秘密裏に君達二人を保護するよう頼んである。これを渡せば、きっとシェルドニア王国で保護してもらえると思う」
「…そうですか」
何もブロテの手紙なんかなくても、頭縦ロール女王のアシミムに会えば。
俺達なら、顔パスで滞在させてもらえると思いますけどね。
「船は午前中に出る。急いで。アンブロとセルニアにこっそり車を回してもらって、港に連れてってもらえるから」
「はいはい、分かりました」
準備ならもう出来てますよ。
慌ただしいけれど、さっさと行きましょうか。
しかし、ルルシーは。
「ちょっと待て…!シェルドニア王国って、本気なのか?あの国は、洗脳…」
あぁ、まぁそうですね。
ルルシーの言わんとすることは分かりますよ。
あの国は、洗脳大国ですからね。
下手に入国してしまえば、俺は『白亜の塔』に洗脳されて、数ヶ月後には「頭縦ロールばんざーい!」とか言ってるかもしれない。
悪夢ですね。
果たしてブロテは、シェルドニア王国のその辺の事情を知ってるのか、否か。
知らなかったとしても、今から逐一説明している時間はなさそうですけど。
「短期間なら大丈夫ですよ、ルルシー。それに、他に行くところがないのなら仕方ないです」
「だ、だけど…」
…それにね。
俺はそっとルルシーの耳元に顔を近づけ、小さな声で囁いた。
「シェルドニア王国なら、顔パスで融通が効きます。少なくとも、追い返されることはないでしょう」
「…」
「一旦シェルドニア王国に入国した後で、改めて別の国に逃げることも出来るでしょう」
ここは堪えて、まずは安全にルティス帝国を出ることだ。
「…俺は、二度とあの国にお前を連れて行きたくなかったんだけどな」
「分かってますよ」
前も言いましたね、それ。
ルルシーったら本当、過保護なんですから。
「でも、俺はあなたと一緒なら大丈夫です」
「…分かったよ。一緒に行こう」
ようやく、ルルシーが折れて、そう言ってくれた。
ありがとうございます。
「それじゃ、行きましょうか」
「…私は、ここで見送る。どうか気をつけて。君達の無実は、必ず証明してみせるから」
そうですか。それはどうも。
心配そうな面持ちのブロテに見送られ。
俺とルルシーは、僅かな手荷物だけを持って、ルティス帝国の港に向かった。
因縁深き国の名前を聞いて、眉を吊り上げるルルシー。
「ルティス帝国から週に一回出る輸出船なの。船長に話をつけて、こっそり乗せてもらうことが出来るわ」
正義の帝国自警団長が、密航について堂々と喋っているとは。
これはたまげた光景ですね。
でも、御本人はあくまで大真面目。
「偽のパスポートを何とか用意したから、シェルドニア王国に着いたらそれを見せて、シェルドニア王国の女王に…」
「パスポートなら持ってますよ。『青薔薇連合会』で使ってる偽造パスポートです」
「分かった。ならそれを使って入国して。その後はシェルドニア王国のアシミム女王に、このお手紙を渡しに行って」
と、ブロテは帝国自警団ブロテ・ルリシアスの直筆の署名が入った封筒を手渡してきた。
「アシミム女王に、秘密裏に君達二人を保護するよう頼んである。これを渡せば、きっとシェルドニア王国で保護してもらえると思う」
「…そうですか」
何もブロテの手紙なんかなくても、頭縦ロール女王のアシミムに会えば。
俺達なら、顔パスで滞在させてもらえると思いますけどね。
「船は午前中に出る。急いで。アンブロとセルニアにこっそり車を回してもらって、港に連れてってもらえるから」
「はいはい、分かりました」
準備ならもう出来てますよ。
慌ただしいけれど、さっさと行きましょうか。
しかし、ルルシーは。
「ちょっと待て…!シェルドニア王国って、本気なのか?あの国は、洗脳…」
あぁ、まぁそうですね。
ルルシーの言わんとすることは分かりますよ。
あの国は、洗脳大国ですからね。
下手に入国してしまえば、俺は『白亜の塔』に洗脳されて、数ヶ月後には「頭縦ロールばんざーい!」とか言ってるかもしれない。
悪夢ですね。
果たしてブロテは、シェルドニア王国のその辺の事情を知ってるのか、否か。
知らなかったとしても、今から逐一説明している時間はなさそうですけど。
「短期間なら大丈夫ですよ、ルルシー。それに、他に行くところがないのなら仕方ないです」
「だ、だけど…」
…それにね。
俺はそっとルルシーの耳元に顔を近づけ、小さな声で囁いた。
「シェルドニア王国なら、顔パスで融通が効きます。少なくとも、追い返されることはないでしょう」
「…」
「一旦シェルドニア王国に入国した後で、改めて別の国に逃げることも出来るでしょう」
ここは堪えて、まずは安全にルティス帝国を出ることだ。
「…俺は、二度とあの国にお前を連れて行きたくなかったんだけどな」
「分かってますよ」
前も言いましたね、それ。
ルルシーったら本当、過保護なんですから。
「でも、俺はあなたと一緒なら大丈夫です」
「…分かったよ。一緒に行こう」
ようやく、ルルシーが折れて、そう言ってくれた。
ありがとうございます。
「それじゃ、行きましょうか」
「…私は、ここで見送る。どうか気をつけて。君達の無実は、必ず証明してみせるから」
そうですか。それはどうも。
心配そうな面持ちのブロテに見送られ。
俺とルルシーは、僅かな手荷物だけを持って、ルティス帝国の港に向かった。