The previous night of the world revolution~F.D.~
…帝国自警団本部を出てから、数時間後。

俺とルルシーは、驚くほどあっさりと、シェルドニア王国行きの輸出船に乗せられた。

一悶着あるかと思ってたんですけどね。全然そんなことはなかった。

車に乗って港に辿り着くなり、人目につかないようスーッと移動して、スーッと乗船。

しばらくそのまま待機していると、時間になったようで、船が動き出した。

あとはこのままのんびりしていれば、船が勝手にシェルドニア王国まで連れて行ってくれるだろう。

はー、やれやれ。

ルティス帝国を出るまでの安全は保証する、と言ったブロテの言葉は、嘘ではなかったようだ。

「…シェルドニア王国か…」

ルルシーはぼそっと呟き、不安そうな面持ち。

「まだ心配してるんですか?ルルシー」

「そりゃ心配だよ…。何せ、これから行くのはあのシェルドニア王国なんだからな」

「…」

どうやらルルシーは、シェルドニア王国に並々ならぬ嫌悪感を抱いてるようですね。

…ま、あの国にされたことを思い出せば、無理もないですけど。

何より心配しているのは、やはり、あの『白亜の塔』でしょうね。

あの国には、電柱と同じ感覚で真っ白い塔が建てられている。

その電波塔からは、人々を洗脳する謎の電波が発せられているそうだ。

…怖っ。

俺もあの電波塔の恐ろしさは、身をもって体験している。

「大丈夫ですよ。2、3ヶ月滞在するくらいじゃ洗脳はされません」

「そうだけど…。…でも…あのアシミムのことだ。何考えてるか分からないだろ」

「アシミムだって、俺を怒らせたらどうなるかくらい分かってるでしょう」

頭の縦ロールをぶっちぎられたんだから、さすがに学習してるでしょう。

俺達、あくまで亡命しに行くのであって。

別に悪いことしに行く訳じゃないんだから、堂々と行けば良い。

まぁ、今のところ密入国なんですけど。

「そんなに心配せず、のんびり船旅を楽しみましょうよ」

まぁ、この船輸出船なんですけど。

でも、ルルシーと一緒なら新婚旅行気分、ってね。

「とてもじゃないけど、俺はのんびり出来そうにないよ…」

あらあら。ルルシーったら困ったちゃん。

今からこの調子じゃ、先が思いやられますね。
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