The previous night of the world revolution~F.D.~
第二部6章
ルルシーの不安をよそに。
船は、やがてシェルドニア王国に到着した。
俺達は、ルリシヤとルーチェスが用意してくれた偽造パスポートでこっそりと入国した。
偽造だけど非常に質の高いパスポートなので、このまま何の問題もなく、シェルドニア王国に滞在出来そうである。
…ただし。
「…うぇ。吐きそう…」
船を降りて入国するなり、俺はうんざりとした気分だった。
「どうした、今更船酔いか?」
「違いますよ…。あちこち真っ白でキモいです」
「あぁ、成程…」
シェルドニア王国と聞いてうんざりする理由は、勿論『白亜の塔』のせいでもあるけど。
俺にとっては、この何もかも真っ白な景色の方に吐き気を催す。
道路のアスファルトも、家屋も、車も、道沿いに生えている木に咲いた花でさえ、全てが真っ白。
目に入るもの何もかもが真っ白なのが、この国の大きな特徴なのだ。
俺にとっては、大層目に悪い。
とにかく、周囲に手当たり次第に墨汁をぶち撒けたい気分。
「とりあえず、ブロテの手紙を渡す為にアシミムのところを目指そう」
「そうですね」
何はともあれ、まずはアシミムのもとを訪ねなければならないだろう。
目指すは王都。そして王宮ですね。
「どうやって移動する?列車に乗るか、それとも…」
「え?列車なんて乗らなくても…タクシーに乗って行きましょう」
「…良いのか?もし姿を見られたら…通報される恐れが…」
ふっ、ルルシー。
ルティス帝国にいた頃の気分が抜けてませんね。さては。
「良いですか。ここはシェルドニア王国なんですよ」
「え?」
「万引きやチャリパク程度で、超極悪犯罪扱いされる国ですよ?通報なんて、されると思います?」
「…あー…」
ルルシーも理解してくれたようですね。
「そういやそうだった…。平和ボケしてるんだよな、この国…」
シェルドニア王国は、『白亜の塔』による洗脳のお陰で、国全体の犯罪発生率が驚くほど低い。
世界一治安の良い国、とまで言われているくらいだ。
まぁ、俺に言わせれば、世界一腑抜けの多い国、なんですけど。
その証拠に。
道を走るタクシー(勿論このタクシーも、車体からタイヤまで真っ白である)を捕まえ。
二人で乗り込み、「王宮までお願いします」と言ったところ。
「はい、分かりました。王宮…観光ですか?」
白い制服を着たタクシーの運転手は、にこにこと聞いてきた。
これがルティス帝国だったら、観光客が王宮に連れて行ってくれ、と頼んだら。
何か企んでいるのか?と怪しまれるに違いない。
大体、タクシーの中も非常に無防備で。
後部座席と運転席の間には、仕切り板の一枚もない。
この国じゃ、タクシー強盗なんて有り得ない犯罪でしょうからね。
「…」
この不用心さには、ルルシーも閉口していたが。
お陰で、問題なく王宮まで行けそうですよ。
船は、やがてシェルドニア王国に到着した。
俺達は、ルリシヤとルーチェスが用意してくれた偽造パスポートでこっそりと入国した。
偽造だけど非常に質の高いパスポートなので、このまま何の問題もなく、シェルドニア王国に滞在出来そうである。
…ただし。
「…うぇ。吐きそう…」
船を降りて入国するなり、俺はうんざりとした気分だった。
「どうした、今更船酔いか?」
「違いますよ…。あちこち真っ白でキモいです」
「あぁ、成程…」
シェルドニア王国と聞いてうんざりする理由は、勿論『白亜の塔』のせいでもあるけど。
俺にとっては、この何もかも真っ白な景色の方に吐き気を催す。
道路のアスファルトも、家屋も、車も、道沿いに生えている木に咲いた花でさえ、全てが真っ白。
目に入るもの何もかもが真っ白なのが、この国の大きな特徴なのだ。
俺にとっては、大層目に悪い。
とにかく、周囲に手当たり次第に墨汁をぶち撒けたい気分。
「とりあえず、ブロテの手紙を渡す為にアシミムのところを目指そう」
「そうですね」
何はともあれ、まずはアシミムのもとを訪ねなければならないだろう。
目指すは王都。そして王宮ですね。
「どうやって移動する?列車に乗るか、それとも…」
「え?列車なんて乗らなくても…タクシーに乗って行きましょう」
「…良いのか?もし姿を見られたら…通報される恐れが…」
ふっ、ルルシー。
ルティス帝国にいた頃の気分が抜けてませんね。さては。
「良いですか。ここはシェルドニア王国なんですよ」
「え?」
「万引きやチャリパク程度で、超極悪犯罪扱いされる国ですよ?通報なんて、されると思います?」
「…あー…」
ルルシーも理解してくれたようですね。
「そういやそうだった…。平和ボケしてるんだよな、この国…」
シェルドニア王国は、『白亜の塔』による洗脳のお陰で、国全体の犯罪発生率が驚くほど低い。
世界一治安の良い国、とまで言われているくらいだ。
まぁ、俺に言わせれば、世界一腑抜けの多い国、なんですけど。
その証拠に。
道を走るタクシー(勿論このタクシーも、車体からタイヤまで真っ白である)を捕まえ。
二人で乗り込み、「王宮までお願いします」と言ったところ。
「はい、分かりました。王宮…観光ですか?」
白い制服を着たタクシーの運転手は、にこにこと聞いてきた。
これがルティス帝国だったら、観光客が王宮に連れて行ってくれ、と頼んだら。
何か企んでいるのか?と怪しまれるに違いない。
大体、タクシーの中も非常に無防備で。
後部座席と運転席の間には、仕切り板の一枚もない。
この国じゃ、タクシー強盗なんて有り得ない犯罪でしょうからね。
「…」
この不用心さには、ルルシーも閉口していたが。
お陰で、問題なく王宮まで行けそうですよ。