The previous night of the world revolution~F.D.~
王宮に侵入する為に、俺がルルシーを案内したのは。

シェルドニア王宮で使われている、隠し通路だった。

「ルレイア、お前…こんな道、知ってたのか…」

「こう見えても一時期、不本意ながら、アシミムの『忠実な』側近をやってましたからね」

「あ、そうか…。…えっと、ごめん」

何で謝るんですか。ルルシーが悪い訳じゃないのに。

アシミムの側近やってた頃に、王宮に繋がる隠し通路の場所を教えてもらってましてね。

その中の一つを、使わせてもらっているという訳です。

ルティス帝国の王宮にも、隠し通路はあるけど。

隠し通路には、鍵がかかっていたり、鉄格子があったり。

果ては、RPGゲームのダンジョンみたいに、罠が仕掛けられていたりした。

それに比べたら、シェルドニア王宮の隠し通路は可愛いものだ。

ほんのちょっと薄汚れているだけで、道は平坦だし、何の罠も仕掛けもない。

拍子抜けですよ。

「この隠し通路は…何処に繋がってるんだ?」

「もう少しですよ。…ほら、到着です」

時間的にも、丁度良い頃合いじゃないですか。

通路の突き当たりに、木の板が釘で打ち付けられていた。

「釘で止められてるのか…。ちょっと待て、釘を抜き、」

「お邪魔しまーす」

「ちょ、おま、ばっ…!」

ルルシーは、ご丁寧に釘を抜いて板を外そうとしたが。

俺は、そんなお優しい方法で侵入するつもりはなかった。

こんな薄い板、軽く蹴り飛ばすだけで簡単に破れる。

思いっきり飛び蹴りを食らわしてやると、釘は全部抜け、バキッと音を立てて板が壊れた。

飛び出されるように、俺とルルシーは、開けた部屋の中に出た。

…そこは、アシミムの寝室に繋がる隠し通路だった。

「…あ、どうも。お邪魔してます」

「…」

華麗に着地して、俺はベッドに寝そべっていたアシミムに気軽に声をかけた。

アシミムはというと、就寝中ではなく、ベッドで顔パックの真っ最中だった。

真っ白いパックで顔を覆ったアシミムが、ぽかんとこちらを見ていた。

俺は、きちんと挨拶したというのに。




「…き、きゃぁぁぁぁっ!?」




アシミムは、顔パックを顔に貼り付けたまま、凄まじい悲鳴をあげた。

…人の顔を見て悲鳴を上げるなんて、失礼だと思いません?ねぇ。
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