The previous night of the world revolution~F.D.~
…30分後。

「…お見苦しいところをお見せしましたわね」

アシミムが、着替えて客間にやって来た。

顔パックも外して、寝巻きも脱いで、普段着を身に着けている。

「全くですよ。あれが女王の格好ですか」

「…女王と言えども、一人の人間だからな。完全オフの時間に寝室に侵入した俺達が悪い」

と、ルルシーが呟いていた。

えっ?今何か言いました?

「お前、ここが女王の寝室だって分かってて侵入しただろ」

あーあー。聞こえませんねぇ。

俺はただ、数ある隠し通路のうちから、偶然選んだ道を通っただけです。

「…それで、貴様らは遥々シェルドニア王国まで、何の用だ」

アシミムの隣にいたルシードが、不満げな顔を隠さずに尋ねた。

いやぁ。イライラしてるようですねぇ。

でも、あなたがイライラする資格はありませんよ。

かつて、おたくらが俺にしたことを思えば。

「だから、それを説明する為に来たんじゃないですか」

「ルティス帝国にいられなくなった…と言っていたが」

「えぇ、その通りです」

何も恥じることではないので、平然と答える。

「…一体何があったんですの?」

…うーん。イチから説明してあげても良いんですけど。

俺が説明するよりも、ブロテに託された手紙を渡す方が早いですよね。

「はいこれ。読んでください」

「…手紙…?」

アシミムは、ブロテからの手紙を受け取った。

それを、隣のルシードと一緒に読むこと数分。

二人共、呆気に取られたように手紙を見つめていた。

「…どうです?納得しました?」

「…」

目を真ん丸にしたまま、手紙を見つめ、それから俺を見つめること数十秒。

「…つまり、国内で起きた殺人事件の容疑者にされて、ルティス帝国にいれば逮捕されてしまうから、国外に逃げてきたということか?」

ルシードが、非常に端的に俺の状況を説明した。

すごーい。名推理(笑)じゃないですか。

「ずばり、その通りですね」

「…」

「まぁ…。…それは…大変ですわね…」

「…」

…言うことはそれだけか?

命からがら故郷から逃げてきた人に、言うに事欠いて「大変ですわね」だと?

もっと他に言うことがあるだろ。

というか、びっくりし過ぎで言葉が出てこないだけ、のような気もする。

「…それで、この…帝国自警団というのは何なんだ?」

と、ルシードが聞いてきた。

…残念だったな、ブロテ。

シェルドニア王国の人間は、帝国自警団を知らないそうだぞ。

ルティス帝国国内でも、帝国騎士団は知ってるけど、帝国自警団は空気だって言われてたくらいですから。

外国の人間が、知ってるはずがない。

それでも、シェルドニア王国の女王なら、帝国自警団くらい知っておいて欲しかったな。

ブロテが泣いてるぞ。

「まぁ、帝国騎士団の親戚みたいなものですよ」

「そうなんですのね…。このブロテ団長という方が、くれぐれもルレイア様とルルシー様を頼む、と書いてありましたわ」

ふーん。

「何にせよ、そういうことでしたら、いつまででもシェルドニア王国に滞在してもらって構いませんわ」

と、アシミムははっきりとそう言った。
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