The previous night of the world revolution~F.D.~
…うぐおぇ。

ヘビだの、ワニだの、ウサギだの。

俺の目の前で、肉とは思えないとんでもないものが豪快に捌かれている。

…ひでぇ…残酷だ…。

全国のウサギ愛好家が見たら、大声をあげて抗議すること間違いなし。

目の前で屠殺されたウサギが、手早く捌かれて肉になっていた。

皮も引っ剥がして、それも販売している。

「あ、あれ…食べられるのか…?ヘビとか…毒が…」

「毒の入ってないヘビだっていますよ。淡白な味で美味しいって聞いたことありますけど」

「…マジかよ…」

ヘビと聞いただけで、エグくて生臭そうで、とてもじゃないけど食べられそうにない。

どんな味なんだろう…。…うなぎっぽい味…?

「シェルドニア王国は肉類の種類が豊富ですからね、他にも食用のサル、ラクダ、ハトやカラスなんかも売ってますよ」

「うぉえ…」

おえっ、とか言っちゃいけないんだろうけどさ。

シェルドニア人の皆さんは、当たり前のようにヘビやハトを買って、調理して食べてるんだろうし。

異国の食文化に異議を唱えるつもりはないんだよ。俺だって。

目の前で絞めて捌いて売ってくれるんだから、新鮮なんだろうと思うよ。俺だって。

…でも、俺は食べたくない。それだけは確かだ。

…それなのに。

「おっ、カラス肉って美味しそうですね。カラスって黒いし。今晩の夕飯に、ちょっと買って行きましょうか」

「あ、おいコラ。ルレイア」

「済みませーん。そこのカラスください」

止める暇もなかった。

ルレイアがシェルドニア語で注文すると、気の良さそうなおっちゃんが、笑顔でナタを振り下ろし。

カラスの肉をぶつ切りにして、皮ごとビニール袋に入れて手渡してくれた。

…うわぁ…。

「これ夕飯にしましょう、ルルシー。きっと美味しいですよ」

「…マジかよ…。カラスだろ…?」

鶏は分かる。鴨も分かる。アヒルも七面鳥も分かるけど、カラスってどうなの?

ゴミ捨て場周辺を、カーカー鳴きながら飛んでいるカラスの姿を思い浮かべる。

あれを食べるっていう発想は…ないなぁ。

でも、食べ物を無駄にするっていう発想はもっとないし…。…食べるしかないか…。

…まぁ、こうして市場で売っている以上、身体に悪いものではないだろう。多分。

「ほんっとグロいものばっか売ってるな…。どうなってるんだよ、シェルドニア人の食文化…」

「おっ。ルルシー、あっちにも人だかりが出来てますよ。向こうは…昆虫コーナーですって」

…。

…こ、昆虫?
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