The previous night of the world revolution~F.D.~
いや、多分俺の聞き間違いだな。

昆虫なんて食べないよ。最近昆虫食とか流行ってるけども。

あれはまだまだローカル食であって、一般的にはまだ普及してな、

「ほら、ルルシー。イナゴですよ」

「うわぁぁぁ…」

マジで。本当に。

野菜や果物と同じように、昆虫が当たり前のように売られている。

しかも、生きたままである。

透明な蓋付きのタライの中に、生きたままのイナゴがうにょうにょと蠢いている。

…きっしょ…。

しかも、イナゴだけじゃなくて。

「あっちはコオロギ、向こうはバッタ…。おっ、ミミズもいますよ」

シェルドニア人は、そんなにミミズが好きなのか?

ペーストにするだけに飽き足らず、生きたミミズを調理して食べるのか。

勿論、シェルドニア産のミミズは、ルティス帝国の石ころの裏に生息してるミミズとは違う。ってことは分かっている。

きっと、人工的に育てられた、高品質のミミズなんだと思うよ。

でも、ミミズはミミズだからな。

しかも、こちらも鮮度が命なのか。

生きたまま、透明な洗面器みたいな容器に入れられて。

その中で、何百、いや何千ものミミズがうにょうにょしていた。

あれをスプーンですくって、何グラムでいくら、という量り売り形式で売っているのである。

ドン引きの俺に反して、シェルドニア人は平然としており。

大きなスプーン三杯分の生きたミミズを、袋詰めしてもらって購入していた。

…うわぁ…。

あれ、どうやって食べるんだろう…。キモッ…。

「この市場の鮮度が良いから、お刺身がおすすめです、って書いてありますよ。ほら」

ルレイアが、ミミズ売り場に貼られていた宣伝文句を指差した。

ミミズ…刺し身…。

「やめろ。これ以上は吐き気を催す」

昆虫は無理。ペーストも刺し身も結構だ。

巷では昆虫食が逸ってるらしいけど、俺はNG。

キモいものはキモい。

それなのに、ルレイアは。

「シェルドニアクログロワーム、っていうイモムシみたいな虫をスイーツに入れたら美味しい、って華弦に聞いたんですよねー。いないかなー」

平然と、昆虫売り場に入っていくルレイア。
 
マジかよ。行くのか?

しかも、クログロワームって…。想像しただけでキモい。

それをスイーツに入れるだと…?

「あっ、いたいた。ほらルルシー、あれですよ」

「ひぇっ…」

ルレイアが指差したのは、大人の指ほどの大きさの、真っ黒なヤスデみたいな昆虫。

それが生きたまま、透明なプラスチック容器の中で蠢いていた。

「おぉー、鮮度が良いですね。よし、これを購入してルティス帝国に送りましょう」

…食うの?それ。

スイーツに入れて、『ブラック・カフェ』で提供するの?

知らずに食べさせられる祖国の民が、酷く哀れだった。

…俺は何も見なかったことにするよ。うん。
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