The previous night of the world revolution~F.D.~
で、ルシードからメールが届いた翌々日。

俺は、朝から張り切っておめかしをした。

…え?亡命中なんだから、目立たない方が良いんじゃないかって?

今日は特別な日なので。特別です。

さぁて。じゃあ愛しのフィアンセを起こすとしましょうか。

「ルルシー、ルルシー朝ですよー」

「んん…?」
 
ベッドでぐっすりと眠るルルシーを揺り起こす。

最近のルルシーは、夜遅くまでシェルドニア語の勉強をしているせいか。

朝はこうして、おねむなことが多いようだ。

何それ。かーわいい。

「朝ですよー。起きてくださーい」 

「あぁ…うん。…もうちょっと…」

ほほう。まだ起きたくないということですか。

いつもだったら、特に用事もないからそのまま朝寝坊させてあげるんですけど…。

今日は、そうは行かないんですよね。

起きてもらわなきゃ困るんです。この後用事があるから。

…仕方ない。こうなったら。

「…じゃ、目が覚めるように俺がおはようのちゅーを、」

「あぁ。おはよう」

顔を近づけようとした瞬間に、ルルシーがしゅばっ、と飛び起きた。

ちょっと。早くないですか?

今チャンスだったのに。

「ちっ…。惜しかった…」

「何が惜しかっただ。危ないところだった…。ったく油断も隙もない」

プリプリと怒りながら、ルルシーはベッドから降りた。

ちっ、起きてしまったか…。千載一遇のチャンスだったのに。

まぁ良い。起きてくれたんだから。

「…それで?何だよ。何か用か?」

と、ルルシーが尋ねた。

「はい?」

「今日はまた、随分と早起きじゃないか…。予定でもあるのか?」

…にゅふふ。

「えぇ。ちょっと行きたいところがありましてね」

「行きたいところ…?また卸売市場か?」

ルルシーの顔色が、サッと悪くなった。

おぉっと。まさか、この間のイナゴとかカラスのことを思い出したんでしょうか。

シェルドニアが誇るゲテモノ食材の数々に、恐れおののくルルシーも素敵だったけれど。

今日は違います。

もっと楽しいところですよ。

「いいえ。今日は別のところです」

「そうか…。まぁ、お前が行くところなら俺も行くよ」

やったぁ。ルルシー大好き。

何処に行くのかも聞かず、俺の行きたいところについてきてくれる。

これも愛ですよね。

「…にゅふっ」

「…そのキモい笑いやめろって、何度言ったら分かるんだ」

大目に見てくださいよ。今日は特別なんですからね。
< 427 / 522 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop